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ヨシヒロの読書ブログ

ヨシヒロの気が向いたときに読書記録をつけていくブログ(小説・文学・哲学・心理学・経営・経済・ビジネス)

ストラクチャーから書く小説再入門 第14章

シーン

「シーン」を二つの部分に分ける

これから「シーン」を二つに分けて説明します。一つはシーン(主にアクション=出来事や行動を描く部分)、もう一つはシークエル(出来事に対するリアクション=人物の反応を描く部分)。

シーン部分

物語は「アクション」と「リアクション」をセットにして伝えます。前者を描くところがシーン部分。葛藤、対立を見せるセクションです。シーン部分では人物が出来事に遭遇し、行動します。ストーリーの中で際立つ部分です。

シークエル部分

シークエル部分では「リアクション」を描きます。シーン部分より地味ですが、なくてはならない存在です。葛藤が前面に出ない代わりにテンションを感じさせます。

 

シーン部分で物事がどんどん展開した後、シークエル部分で登場人物も読者もいったん落ち着き、出来事を振り返ります。

 

また、先のことを考えて決断するまでの思考プロセスが起こります。「決断後、次の行動に出る」という流れになると、ストーリーは新たなシーン部分へと移ります。

シーン部分を作る三つのブロック

ストーリーに三幕構成があるように、「シーン」にも基本的な構成があります。シーン部分もシークエル部分も、やはり三つのブロックに分かれます。

 

1 序盤=掴み

2 中盤=発展

3 終盤=クライマックス

 

では、具体的には何を書けばいいのでしょう?実は、シーンとシークエルでは三つのブロックで描く内容が異なります。まず、シーン部分を見てみましょう。

第一ブロック:ゴール

まず、ゴールは何かを伝えます。物語全体のゴールは物語全体のスパンで目指すもの。シーン部分では、人物がシーンの中で目指すゴールを設定します。目指すものがなければ物語は進みません。

 

ゴールがない=発進しない。

 

シーンのゴールは物語全体のゴールの縮図か、それに向かう小さな一歩に当たります。例えば、物語の最初から最後までを通して「捕虜収容所からの脱走」を目指す話なら、シーンのゴールは「スコップを手に入れる」「衛兵を買収し、見逃してもらう」「仲間に協力を求める」など。人物の目標が定まれば、一つひとつのシーンを書く目的もはっきりします。

 

ゴールがない=意味がない。

 

できるだけ早く人物の目的を書きましょう。何がしたいかわからないと、読者も続きが読みづらいのです。人物は何をしようとしているのか。なぜ、そうしようとするのか。失敗すれば、どうなるか?

第二ブロック:葛藤

ゴールに向かう人物は障害にぶつかり、葛藤します。「葛藤がなければストーリーにならない」と言われますが、正確に言えば、「葛藤がなければシーンにならない」。何かとぶつからなければ人物はあっけなくゴールにたどり着いてしまい、話になりません。

 

葛藤はシーン部分の真ん中で話を発展させる役目をします。読んで面白いくだりの大部分は、おそらく葛藤で占められるでしょう。

 

捕虜収容所の例だと、物語全体の葛藤は「主人公は脱走したいが、司令官は脱走させまいとする」。シーン部分の葛藤は「スコップを盗もうとするが、衛兵に見つかる」、「衛兵をうまく買収しようとするが、計画を見破られて脅かされる」、「計画に不安を感じた仲間に反対される」などになるでしょう。

 

ここでは、主人公のゴールが妨害されることが必要です。「他の捕虜に突然、因縁をつけられる」といった案もありますが、主人公のゴール達成が危うくならなければ、プロットから外れた小競り合いで終わってしまうでしょう。

 

葛藤、対立の例は「ナイフを持ってケンカする」といった身体的なものから「クレジットカードを失くして立ち往生する」といった状況から生まれるものまで様々です。争いやケンカ、口論だけとは限りません。ゴールを目指して行動する人物が邪魔されたり、思い通りにいかなくなるところを描いてください。

第三ブロック:災難

葛藤や対立は、どこかで決着させねばなりません。それも、たぶん主人公に不利な方向で。結末を「災難」に終わらせ、次の「シーン」につなげます。丸く収めてしまうと「次はどうする?」という流れが起きませんから、物語が終わってしまいます。

 

ただし、災難続きにするのはほぼ不可能。たまには主人公に調子よく進んでもらわないと、プロットが先に進まない時もあります。

 

それでも私が「災難」という言葉にこだわるのは、主人公にリスクを負わせ、不安定な状態に置き続けたいからです。「災難」の内容は様々です。大きなものだと銃撃戦や車のクラッシュ。それより小さく静かなものだと、騙される、運転中にタイヤがパンクする、バレンタイン・デーのチョコが溶けてしまう、など。

 

「まずい結果」ならなんでもいいのではなく、葛藤との因果関係が大事です。「彼女とケンカして、ふられる」ならOK。「彼女とケンカして、交通違反で逮捕される」だと因果関係があるかは疑問です。ケンカか逮捕、どちらかを書き換える必要があるでしょう。

 

捕虜収容所の例なら、「スコップを探すが、見つからない」「買収工作が失敗し、衛兵に脅される」「仲間を誘うが、『自分勝手なことをするな』と責められる」など。主人公に「どうしよう、これじゃ自分の思い通りにいかなくなる」と言わせるような結果を選ぶことがポイントです。

シーン部分の目的を考える

効果的で意味のあるシーンを書くには、「シーンの大筋」と「そのシーンを書く目的」に注目します。私たちがシーンを考える時の思考プロセスは次のどちらかです。

 

1 シーンがプロットにどう影響するかわからないまま、とにかく出来事を想像する。

2 プロットを進めるのに必要な出来事がわかっており、それに合わせてシーンを考える。

 

2のようにプロットに合わせてシーンを組み立てる方がやりやすいでしょう。1の方法でもいきいきとしたシーンが書けるかもしれませんが、プロットから外れた部分は後で修正しなければなりません。どちらにしても、アドバイスは次のひとことに尽きるでしょう。

 

シーンを書く前に目的を決めてから、どんな要素や物事を出すかを決めなさい。

シーンを停滞させずに進める方法

小説の中には、さして盛り上がらないくだりもあるでしょう。私たちの生活だって、お祭り騒ぎや大事件ばかりが続くわけではありません。家事や雑用をする時間もあって当然です。そんなメリハリを小説の中でうまく作るには、どうすればいいのでしょう?次の「見せ場」が来るまで、読者を退屈させたくありませんよね。

 

地味なシーンを書く時は、情景の裏に何かありそうだとにおわせる。嵐の前の静けさですよ、と伝えればテンションが高まります。

 

もう一つのコツは、動的な描写をすること。人物が立っているだけではプロットは進みません。立って考えているだけなら、なおさらです。読者の目に浮かぶのは、つまらない風景。行動させない限り、心の声やセリフを延々と書くことにもなるでしょう。

 

人物が道を歩くだけでも、読者は人物と一緒になって動く感覚を得ます。人物の動きが推進力や切迫感を生むのです。

 

「ここは流れが悪いなあ」と感じるところがあったら、小休止しましょう。目を閉じて、映像を見るように光景を想像します。きっと大部分は映画のように思い浮かべられるはず。その中で人物がじっと静止した状態なら、流れも停滞するはずです。

 

原稿を読み返して「なんだかつまらない」「無駄が多い」と感じたら、人物の動きをチェックして下さい。理由がない限り、じっと座っていたり、立ったままでいたりする設定は避けましょう。キャラクターを動かせば、プロットも動きます。