Cork

ヨシヒロの読書ブログ

ヨシヒロの気が向いたときに読書記録をつけていくブログ(小説・文学・哲学・心理学・経営・経済・ビジネス)

ストラクチャーから書く小説再入門 第8章

第2幕の後半

ミッドポイントを過ぎたら物語はヒートアップします。主人公は積極的に行動し始め、プロットの運びは活発になります。

 

この裏にあるのは主人公が得た「気づき」であることが多いでしょう。その気づきが何なのか、まだ本人は言葉で言い表せないかもしれません。また、内面の弱さや欠点、問題も残っているでしょう。

 

しかし、「これではいけない、何かせねば」と思い始めます。ミッドポイントの転機以後、徐々に生まれ変わろうとします。

 

主人公に状況を支配する力はないでしょうが、苦しい状況下でも前向きに行動します。やはりここでもドミノ式にアクションを連鎖させます。目指すは全体の七十五%地点にある「プロットポイント2」。その後、第三幕の最終バトルになだれ込みます。第二幕の後半は伏線を張る最後のチャンス。第三幕で使うもの、出てくるものは全て登場せておきます。

 

ミッドポイントの転機で「これではいけない!」「もう黙っていられない!」と感じた人物は、パワフルな行動に出ます。例えば、敵対者に反撃する、無知な状態から目覚める、目標達成に意欲を燃やす、戦いを決意する。

 

第二幕前半の行動は、前半でのリアクションの映し鏡となるでしょう。よく考えれば、アクションもリアクションも同じようなもの。ただ、前半の人物は、身にふりかかる出来事に反応するばかりだったかもしれません。ミッドポイント以降の第二幕後半では、人物に内面の強さが生まれます。自力で運命を切り開くのは困難でも、困難に対して何かしようと試みます。

 

こうして人物が成長しようとすることで、物語は動きます。動かなければ、古タイヤの内側にたまった水と同じで、ずっとそのままです。変化のない小説は退屈。読み応えのあるアクションもテーマもなく、綴った分は同じことの繰り返しになるでしょう。

 

人物描写が単調になる原因はたくさんありますが、やはり一番最初に疑うべきは「変化、あるいは成長をさせていないこと」です。原稿の最初と最後を取り出して、人物の様子を比べてみて下さい。「代わり映えしない」「前とおんなじ人だ」と思ったら、書き手は自分に厳しい質問を投げかけなくてはなりません。その一つは「なぜ?」です。

 

「ええ、僕の小説では人物の成長を描いていますよ」と言う人も、うっかり落とし穴に落ちている場合があります。確かに小説の最初と最後で人物は変化している。ただその変化が徐々にではなく、終盤で唐突に起きているのです。

 

アクションが本格化する中盤を見て下さい。段々成長していく人物を、やはりドミノ式に描写したいところですが、ずっと同じ心理状態を続けていませんか?

 

小説の後半を見て下さい。前半に出てきたシチュエーションと類似する状況で、前半とそっくりの反応を人物にさせていませんか?もし反応が同じパターンなら、一本調子だというサインです。

 

第二幕後半は全体の二十五%ですから、かなりの分量です。この部分を使って人物を鍛え抜き、終盤のクライマックスへと運んでくださいね。失敗から学び、また問題に直面させ、敵に立ち向かう準備をさせましょう。

 

手抜きができない部分ではありますが、ミッドポイント後に急成長させないよう注意して下さい。でないと、終盤での変化がかすんでしまいます。内面も含め、人物が最大の危機に直面するのは第三幕。第二幕後半は準備期間と捉え、後に人物が直視せねばならない欠点を、伏線として描いておきましょう。

ピンチポイント2

第二幕後半が半分過ぎると第二のピンチポイントが訪れます。ピンチポイント1と同様、敵対者の力が直接的に、あるいは何らかの方法で表れ、主人公に脅威を与えます。

 

ここでは最終決算の前に、敵がいかに強いかを見せて危機感を盛り上げます。例としては、激しい議論、権威を見せて相手を押さえつける、悪者による略奪行為の激化、敵対者による新たな追跡、敵が主人公に接近するなどがあります。