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ヨシヒロの読書ブログ

ヨシヒロの気が向いたときに読書記録をつけていくブログ(小説・文学・哲学・心理学・経営・経済・ビジネス)

ストラクチャーから書く小説再入門 第10章

クライマックス

あなたの小説がどんなジャンルであれ、読者から得たいのは感動ではないでしょうか。嬉しくなったり、悲しくなったり、考えをめぐらせたりしてもらいたい。そして、「うん、やっぱり納得の結末だな」と言ってもらいたい。また同時に「うわぁ、結末がまさかこうなるとは!」とも言わせたい。優れたエンディングとはそういうものです。

 

完璧なエンディングには、必然性と意外性の両方が必要です。理屈として納得できて、予想外。なんだか矛盾しますよね。そんなエンディングが書けるものなのでしょうか?

  

読者は書き手にフェアプレーを求めます。筋が通らないものは受け入れてくれません。「意外な結末」が書きたいなら、さらにハードルは高くなります。ですから、「物語に出てくるものは中盤の終わりまでに全部登場させておきましょう」と言うのです。読者が「ここまで話が広がってるけど、どうまとまるのかな?」と思っていたら、突然、見たことがないものが登場して終わり、と言う小説ほどひどいものはありません。

 

必然かつ意外なエンディングを書くには、「伏線」と「複雑化」の二つが必要です。つまり、パズルのピースをあらかじめ見せておくことと、多くのピースを与えて複雑にみせかけること。小説の終盤は、パズルで言うなら全体の絵がほぼ見えている状態です。残り、あと十個ほどをはめ込んだら完成といったところにいます。

 

結末につながる伏線を張れば、エンディングに必然性が生まれます。かすかに伏線を見せた後、引き続き論理的にプロットを進め、紆余曲折を見せて複雑化します。読者の注目を色々な方面に向かわせれば、「最後はこうなるかな、それとも、違う方のこっちかな」と考えるようになり、エンディングを完璧に予測することは不可能になります。微妙な匙加減ですが、うまくできれば作品を成功に導いてくれるでしょう。

クライマックスとは何か?

ストーリーが中盤の終わりで転機を迎え、終盤に入るとアクションはどんどん激しくなります。ですから、第三幕全体がクライマックスと言えなくもありません。しかし、厳密には、第三幕の一部分。主人公と敵対者が対決する瞬間が真の「クライマックス」です。

 

クライマックスでは戦うアクションを描いたり、状況の変化を描いたりしますが、ほぼ全ての物語にあるのは主人公の「気づき」です。クライマックス近くで何かを悟る。そして、それまでの考え方を捨て去り、敵にぶつかっていく。自分の心の葛藤にも、敵との対立にも、ここで決着をつけようとします。

 

クライマックスの位置は第三幕の終わり頃。全体で言うと、最後の一〇%ぐらいです。大抵の場合、クライマックスの終りに来る「クライマックスの瞬間」はラストから二番目のシーン。それが終わったら、あとはラストシーンのみです。語るべきことはクライマックスで出し尽くしてしまいます。ラストシーンは情緒的な余韻を見せるだけの存在です。