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ヨシヒロの読書ブログ

ヨシヒロの気が向いたときに読書記録をつけていくブログ(小説・文学・哲学・心理学・経営・経済・ビジネス)

ピーター・リンチの株で勝つ

前書き

今日は株式投資の本で有名な『ピーター・リンチの株で勝つ』から、私が気になった部分を書いていきたいと思います。

著者について

著者のピーター・リンチは77年より株式投資信託マゼラン・ファンドの運用にあたり、90年に引退するまでの13年間に同ファンドの資産を2000万ドルから140億ドルへ世界最大規模に育て上げた人です。

序章

投資家として成功するためにはとくに流行を追う必要はないことを、経験が教えてくれている。事実、偉大な投資家のほとんどは、(ウォーレン・バフェットをはじめ)科学技術恐怖症である。彼らは自分が理解できないものは保有しない。

 

株式に投資する場合の成否は早かれ遅かれ収益による。株価の今日や明日、または来週の動きは単なる気粉れでしかない。

 

店の好み、製品、レストランなど、その会社に興味を持ち、調査リストに載せるのは結構なことだが、それだけでは株を持つのに十分とは言えない。利益見通し、財務状況、競争上の位置、成長計画などなどについての宿題を済ます前には決して投資をしてはいけない。

はじめに

話題の銘柄や証券会社の推薦銘柄、専門誌の「今週の銘柄」などは無視して、自分自身の調査にもとづいて投資すべきだろう。

 

少し意識的に自分の仕事や近所の商店街などで起こっていることを見るだけで、ウォール街が気がつくよりずっと以前に、すごい銘柄を見つけることができる。自分の働いている業界の変化や、消費者としての情報を意識的に利用すれば、10倍になる株を見つけられるだろう。

 

一般投資家のなかには、町に行ってドーナツを食べることが株式の基礎的調査の第一歩になる、と気づいていない人が多く見られる。かえって、何も知らないわかりにくい会社への投資のほうが安心していられるような変な投資家心理がある。理解できない高級そうなものに大事な金を預けようというような不文律が、ウォール街にはあるようだ。近所にある会社なんかはつまらないから避けて、見たこともない商品を生産している会社を探せとでも言っているようだ。

 

株式投資を始める前に幾つかチェックすべきことがある。相場をどうとらえるか、「米国株式会社」を信頼しているか、本当に投資する必要があるのか、投資に何を期待しているか、短期にするのか長期投資に徹するのか、突然株価が急落したらどう対処するか、などである。投資を手掛ける前に、目的を決め、自分の態度をはっきりしておくべきだ。もし優柔不断で確信が持てないと、株価が最悪のときにすべての希望や分別を投げ捨てて最低の株価で売ってしまう、いわば、相場の犠牲者になる可能性が高いからである。慢性的に損をする者と成功者との分かれ道は、知識や下調べとともに性格的な心構えにある場合が多い。投資家の運命の決め手は、相場や選ぶ銘柄ではなく、投資家自身なのだ。

株式投資家になるまで

株式投資は科学というより芸術であり、何でもはっきりと数量化したがるタイプの人間には向かない。もし株を選ぶのに数量化が可能なら、クレイのスーパーコンピュータをちょっと借りて、大儲けができるはずだ。実際にはそうは問屋がおろさず、投資に必要な数学的知識は、クライスラー社は現金が10億ドル、借金が5億ドルあって云々という程度の、小学校四年生くらいの算数の知識で十分である。

ウォール街の矛盾した表現

たとえばあなたが資産10億ドルの企業年金を運用するとしよう。いろいろな規則を順守すると40社くらいしか対象企業のリストに残らない。しかも一つの株は総資産の5%までしか買えないので、最低20銘柄に投資しなくてはならず、そして最高でも40銘柄である。

 

この場合、2500万ドルの投資が総発行株式数の10%以下にしかならない会社に限られ、そうなると急成長中の小型株への投資など無理だ。えてしてこういう小型株に10倍株が含まれているのである。

鏡の前のテスト

「万一失敗したとしても、将来的に見て、毎日の生活に支障のない余裕資金の範囲で株式投資をすべきだ」

 

自分が持つ変な信念や思い込みを除かなければならない。ほとんどの人が株価や金の値段や金利について、表立っては言わなくても感覚的な信念を持ちやすいものだが、現実には考えとは反対に間違いの繰り返しになることが多い。人々は株が上がるとか景気がよくなるとか勝手に思い込んでは、正反対の現実にうちのめされていることのほうが多い。

 

人間の性格は、えてして相場のタイミングとずれがちである。意志の弱い投資家は、迷い、納得、あきらめ、という三つの感情の間を行き来して気持ちが揺れている。相場の下落や景気の落ち込みを心配するあまり、よい銘柄をバーゲン価格で買えるせっかくのチャンスを逃し、その挙げ句、高値で買い込み、その後のちょっとした値上がりで大満足してしまう。こういうときこそファンダメンタルズをチェックして、いつ売るかを考え始めるときなのだが、むしろ有頂天になってしまう。結局株は下がり、買値を下回ったときに降参して売ってしまう。

 

長期投資家を自負している人でも、株価が大きく下がると一転して短期投資家になり、大きな損か、せいぜい少しの益で売り離してしまう。

 

みんな、居眠りしようとすべきなのだ。相場の先行きを予測するには、人の意見を聞くのではなく、むしろいびきをかくことだ。また、自分の相場観を信じるよりは、むしろ無視できるように心掛けることだ。会社の業績などの先行きに変化がない限り、持ったままでジッとしていることだ。

相場はよいかって? そんなことを聞かれても困る

はっきりしていることは、株で金儲けをするのに株式市場全体の予測をする必要はないということだ。

 

株式相場は全くもって不合理な動きをするものである。このことさえ理解してもらえれば、この本は成功だったと言っても過言ではなかろう。もし私の言うことが信じられないなら、せめてウォーレン・バフェットの言うことは信じてもらいたい。彼にすれば「私に関する限り、株式市場は存在しないも同然であり、あれは誰かが愚かなことをするチャンスを与えている場に過ぎない」ものなのだそうだ。

 

よい銘柄さえ選べば相場のほうは気にしなくてもよい。

10倍株をねらえ

テンバガーを見つけるには、まず自分の家の近くから始めることだ。裏庭になければ、商店街や、職場である。成功の兆しは地域の至るところで見つけることができるはずだ。誰もが「こいつはいいぞ、株のほうはどうなっているんだ」と思うチャンスがあったはずだ。それもウォール街の連中が気づくよりずっと前に。

 

普通、年にニ、三回かそれ以上、こうしたチャンスに出くわすものである。

 

自分の知らない株を買って幸運にも儲かる人もいるかもしれない。だがそれはマラソン選手がその名声をボブスレーに賭けようと考えるのと同様に、あえて自らハンディキャップを負うようなものである。

 

ある業界についての知識が有望株を見つけるのにどれほど役立つか、いくらでも書くことができるが、そのほかに一般消費者の知識がある。これは、急成長する新興の中小企業、とくに小売業のなかから有望株を拾い出すのに役立つ。どちらの知識を使うにせよ、素晴らしいのは、ウォール街に先んじて有望銘柄を見つけ出す自分自身のシステムをつくることができる点である。

ついに見つけたぞ! 何を?

もしも、ある製品の好調さを理由にその会社の株に投資しようと考えているのであれば、その製品の成功がどれほどその会社の収益に寄与するのかを調べるのが先決である。

 

会社の規模は株価の動きに大いに影響する。あなたが株を買った会社はどのくらいのサイズなのか?会社の製品が特殊な場合を除き、大きな会社の株はあまり値動きがない。ときには大きく動くこともあるが、やはり小さい会社の株のほうが大きな動きを見せる。

 

時として一連の不運から大会社が窮地に陥ることがあり、そこから回復するときには株価が大きく動く。

 

他の条件が同じとすれば、小さい会社ほど株価がよく動く。

 

これまで、各業界における会社の規模による位置づけによって株価の動きを考えてきたが、次には六つの一般的な分類のなかで各企業の株価の動きをとらえることにしよう。すなわち、低成長株、急成長株、市況関連株、業績回復株、資産株の六つである。

低成長株

大きくて古い会社は、通常GNPより少し大きい成長率を示す。これら低成長株も初めからそうだったのではなく、最初は急成長株だったものが、限界に達したか、努力をやめたかでついに停滞してしまったものである。ある産業が停滞するときには、その産業に属するほとんどの会社がやはり勢いを失うことになる。

優良株

低成長株を上回る成長をし、年率10~12%程度の成長が期待できる。

急成長株

年に20~25%の成長を遂げ、うまくすれば株価は10倍から40倍、あるいは200倍にもなりそうな積極性のある小企業。

 

急成長株が急成長産業のなかにあるとは限らない。実際、そうでないほうが多い。

 

成長を続けられる限りは、急成長会社の株価のほうも急上昇する。私ならば、財務内容がよくて収益性の高い会社を探す。要は、いつ成長が止まるか、そしてどれだけの資金をその成長に賭けるべきかを見極めることである。

市況関連株

市況関連株とは、売上げと利益が循環的に上下する企業の株式を言う。成長産業では業績は拡大を続けるが、市況関連産業では拡大と収縮を繰り返す。

 

市況関連株は最も誤解されやすいタイプの株である。不注意な投資家が安全と信じて買って損をするのが市況関連株だ。ほとんどの市況関連株が大きくて有名な会社の株なので、優良株と混同しがちなのである。

業績回復株 

業績回復株は、会社更生法の世話にはならなかったものの、大いに痛めつけられて、業績不振の淵から立ち直ったというような企業の株である。

 

たまに出る業績回復株の大当たりはたいへんな儲けをもたらすものである。

資産株

ウォール街の連中は見過ごしていてあなたは知っているというような何らかの資産を持っている会社の株を資産株と言う。

 

資産とは、現金のように単純なものもあれば、不動産もある。

 

まず、第一歩として、株がどのカテゴリーに属するか調べるべきだ。これで少なくともどういうストーリーになるかがわかる。次にそのストーリーの結末を知るべく、細部を詰めていくのである。

完璧な株、なんて素晴らしい!

基本のビジネスがよくわかっていれば、その会社を理解するのもずいぶん楽である。だから、私は、通信衛星ではなくストッキングに、光ファイバーではなくモテル・チェーンに投資するのである。単純であればあるほど、私は好きだ。「この店はどんな馬鹿でも経営できる」と誰かが言えば、いずれは実際そうなるのだから、これは私にとってはよい材料なのである。

私が避ける株

私が何より避けたいのは、超人気産業のなかの超人気会社である。ニュースを賑わし、誰もが通勤途上でも耳にし、つい周囲に押されて買ってしまうような株である。

 

人気化した株は急騰するが、夢を買っているだけなので、落ちるときも急だ。もし人気株を売るだけ利口でないなら、すぐに株価は下がり始め、それも急激に、そして買値より下まで落ちていくものである。

 

忘れてしまいがちなのは、もしその会社の見通しがそんなにものすごいのなら、来年か再来年でも投資するのに遅くないということである。会社が実績をあげてからでも間に合う。評価を確立した会社からでも10倍株はとれるものである。疑わしきは待てだ。

収益、収益、そして収益

何を基準にして株価が上がると言えるだろうか。買うとしても、いくらで買えばよいのか。

 

それは、その会社がどのくらい値打ちがあるか、そして明日は今日よりどれだけその値打ちが上がるかということである。それには数多くの理論があるが、私にとって重要なのは収益と資産であり、とくに収益である。時として株価が会社の内容に追いつくのに何年もかかり、しばらく低迷して、投資家には株価はもう上がらないのではないかと思わせることがある。だが、会社の内容(値打ち)は必ずいつか正しく評価されるものである。収益と資産をもとに株を分析するのは、コインランドリーやドラッグストアやアパートを買う場合とまったく同じである。株とは、宝くじではなくて、ある会社の部分所有権だということを忘れてしまいがちである。

 

株価と収益を並べたチャートをみれば、どのチャートでも株価と収益のラインが並行しているのがわかるだろう。もし株価のラインが収益のラインから外れていたとしても、そのうちまた収益のラインに近づいてくるものである。

 

ある株のPERが40倍で、他の株のほうが3倍だとしたら、それは前者の将来の収益向上に大きな期待が持たれており、後者のほうは疑問視されているということだ。

 

また、急成長株ほどPERは高く、低成長株ほど低く、市況関連株はその中間であることにも気づくだろう。電力株の平均は7~9倍、優良株は10~14倍、急成長株は14~20倍といったところである。PERの低い割安株だけを買おうとする人がいるが、私には賛成しかねる。リンゴとオレンジを比べるわけにはいかないのだ。

 

自分の持ち株のPERが産業平均と比べて、高いか、低いか、適当か。「これはこの業種では割安です」と言われれば、そのPERが低いということである。

 

またある株のPERの過去の記録も入手できる。株を買う前に過去数年のPERを調べることで、株価水準もつかめる、

 

PERについての説明を忘れたとしても、異常に高いPERを避けるべきだということは覚えておいて欲しい。損をせずに済む。ごく少数の例外を除いて、異常に高いPERは、競馬で蔵にハンデの重量をつけるのと同様にハンデになる。

 

PERの高い会社は、それを正当化するだけの高い収益成長力を持っているはずである。

 

将来の利益がわからない場合でも、その会社がどのように収益向上を図っているかは調べられる。そうすれば、定期的にその計画が実行されているかどうかをチェックすることができる。企業が利益を増大させるには五つの基本的な方法がある。コスト削減、値上げ、市場拡大、市場占有率拡大、そして赤字部門のテコ入れ、閉鎖、または売却。これらの要素を調査すればよいのである。

二分間の訓練

さあ、あなたが低成長株や優良株、あるいは急成長株や業績回復株、資産株、市況関連株のどれかに投資することはもうおわかりだろう。現在の株価が短期的に見て買われ過ぎか、過小評価されているかを知る方法としてPERがある程度役に立つこともわかった。次の段階としては、その会社の成長の可能性、あるいはそれを推進する材料は何なのかを知ることが必要になってくる。これが「ストーリー」と呼ばれているものである。

 

資産株の会社は別として、企業が収益性を保つために何か画期的なことが必要となる。それが何であるかがわかれば、より深くストーリーを理解できるだろう。アナリストの短い記事はプロの見方を伝えてくれるにすぎず、あなた自身がその会社あるいはその業界を深く知ることができれば、自分のレベルにあった有用で具体的なストーリーをつくることができるだろう。

 

株を実際に買う前には、その会社の魅力、成長性、弱点などを、もう一二分間だけ自問自答してみるとよい。子どもにも理解してもらえるまでに理解がこなれていれば、その会社の株にたいする投資準備は万全と言えるだろう。

 

自問自答のパターンとしては次のようなものが考えられる。もし、投資対象が低成長株であるならば、配当に留意したものになるだろう。

 

もし、市況関連株ならば、景気、在庫、市況などを考慮しなければならない。

 

もし、資産株ならば、何が含み資産で、どの程度の価値があるのかが問題となる。

 

もし、業績回復株ならば、その会社が変革に熱心であるか、またその計画は十分に機能しているかが問われる。

 

もし、優良株ならば、PERが最も重要な要素であり、すでに十分株価が上がっているのか、成長性増大の可能性があるのかどうかが注意を要するポイントである。

 

もし、急成長株であるならば、どの分野でどの程度まで今のスピードで成長し続けられるかが注目される。

 

以上はストーリーの基本的なテーマの一部であるが、詳しく知れば知るほどよいのだから、自分自身で必要なだけ付け加えればよかろう。常にそうだとは言わないが、私はストーリーの組み立てに数時間を費やす。

知って役に立つ幾つかの数字

売上げに対する比率

個性のある商品を持つ企業に対する私の最初の興味は、その商品がその企業にどれほどの影響を与えているかである。総売上高のなかのその商品のシェアは何%なのか?

株価収益率(PER)

もしコカ・コーラのPERが15倍なら、この会社は年率で15%の成長を期待できるし、もしPERが成長率より低ければ、それはバーゲン価格である。

 

一般的に、PERが成長率の半分だときわめて魅力的だし、PERが成長率の2倍なら非常に危ない。

負債項目 

その会社の負債はいくらあって、資産はいくら持っているのか?負債対資本の比率は?これについては銀行の貸付係があなたの信用度を調べて貸すことと同じである。

 

業績が急転している会社やトラブルのある会社については、私はとくに負債を注意して見ている。その会社が生き残ることができるか、それとも倒産するかは一にかかって負債なのであり、創業まもない、負債の多い若い会社には常にリスクがつきまとう。

配当

株価が20ドルの株が2ドルの配当をしていれば利回りは10%だが、10ドルに下がれば利回りは20%となる。したがって、投資家が配当率に納得できるのであれば、高配当ゆえにその株に投資することもあるだろう。当然、株価の下支えになる。

キャッシュフロー 

私は、設備投資にキャッシュを使わなくても事業ができる会社に投資するのが好きである。入ってくるキャッシュが出ていくキャッシュとせめぎ合う必要がない(資金繰りに困ることはない)からだ。

 

たくさんの人がキャッシュフローの数字を株式の評価に用いている。たとえば20ドルの株価に対して、標準とされている10対1の、2ドルのキャッシュフローがあるとする。キャッシュで10%のリターンは、長期に株を保有する人が期待する最低で10%のリターンとうまく噛み合う。

在庫

私はいつも在庫が増えていないかどうかに注目している。メーカーや小売りを問わず、在庫が増えるというのは悪いサインである。在庫の増加率が売り上げの伸びを上回っていれば、これはもうレッドカードである。

成長率

すべてが同じだとすれば、たとえば20%の成長率でPER20倍の会社と、10%の成長率でPER10倍の会社なら、前者を買うほうがいい。

ストーリーを再チェックする 

数ヵ月おきに会社に関するストーリーを再点検してみるとよいだろう。利益が予想どおりに保たれているかどうかといった収益の状況を調べること。それに、商品がまだ魅力を失っていないか、繁栄している雰囲気があるかどうか、店に行って調べてみるのもよいだろう。新しい事態が起こっていないか、とくに急成長会社の場合は、何が今後の成長を支えていくのかを問い直してみることも必要である。

 

会社の成長過程には三段階がある。本業の発展を成し遂げる始動段階、新規事業へ進展していく急上昇段階、もうこれ以上成長が難しい飽和状態に近づきつつある成熟段階、の三つである。これら三段階は、それぞれがだいたい7年くらい続く。

ポートフォリオをつくる

私の考え方としては、以下のような銘柄をたくさん保有することがベストである。①自分の得意な分野に関係する銘柄、②あらゆる調査の結果、非常に有望な見通しを発見した時。ポートフォリオ多角化のためにということで知らない銘柄を組み入れるのは賢いとは言えない。 おろかな多角化は、小口投資家にとっても鬼門である。

 

かといって、1銘柄だけ保有するのは、それほど安全ではない。あなたの最善の努力にもかかわらず、時に不測の事態の犠牲になる株かもしれないからだ。小さめのポートフォリオでは、3ないし10銘柄保有するのがよいと思う。複数の恩恵を受ける可能性があるからだ。

 

もし、10倍株を探し当てようとするなら、保有する銘柄が多ければ多いほど、その確率は増える。

 

10倍株が得られるとしたら、たぶん高成長か業績回復のカテゴリーだが、どちらもハイリスク・ハイリターンの分野である。株価の上がる可能性が高ければ高いほど、下がる可能性もまた大きい。もし、高成長にひずみが生じたり、あるいはかつての業績不振から立ち直りかけて再建途上にあったものが再び悪化するような場合には、全額を失うこともあるだろう。

 

こういったリスクとリターンを計るよい方法などないが、高成長株を4社、業績回復株で4社保有し、スリルを緩和させる意味で、ポートフォリオのなかに安定株を2社組み入れるというのもよいだろう。繰り返しになるが、分別のある買い方を心掛けるべきである。

 

あなたのポートフォリオも、歳を重ねるにつれて変化していく。この先まだ何年も働き続ける若い投資家には、投資収益で暮らす老いた投資家よりも、10倍株をつかむ機会がある。若い投資家ならミスをしてもそれが経験となり、投資キャリアを充実させるためになる時間が何年もあるからだ。

 

よりよい戦略とは、ストーリーとの関連で株価がどう動くかによって、株の組み入れを増やしたり減らしたりして循環させることだと、私は思う。仮に、優良株の1つが40%上がったとする、その先、うれしい驚きとなるような素晴らしい出来事が何もないと思えるなら、私はこの株を売って、まだ上がってはいないけれど、魅力的と思われる他の優良株と入れ替える。同じ状態で持ち株全部を売りたくないのなら、部分的に利食いをすればよいだろう。

 

私なら、業績も伸び続け、ビジネスも拡大し続けていて、障害になるものがない限り、高成長会社の株は持続する。そして、数ヵ月ごとに、はじめに聞いたストーリーがまだ生きているかどうかをチェックし、また2つの成長株を保有していれば、一方の株価が50%上昇し、そのストーリーの基盤が疑わしいと思えばそれを利食って、株価が下がり気味か、あるいは変わらずとも、ストーリーがよくなってきた第二の成長株への投資を増やすだろう。

 

市況関連株、業績回復株についても同じである。ファンダメンタルズが悪くなりそうで、株価が上がっているものは利食い、ファンダメンタルズがよくなり、株価が低いものに乗り換えるべきだろう。

 

よい株であるのに株価が下がっているものを、その価格でナンピン買いせずに逆に売ってしまうのでは、ただの悲劇にしかすぎない。私にとって、相場の下げは、ポートフォリオのなかで、将来有望だがまパフォーマンスの悪いものを買い増しする絶好のチャンスに思える。

 

もし、あなたが「株価が25%下がったら押し目買いする」という決心ができずに、「25%押したら売ってしまおう」という致命的に誤った考えを捨てることができないようなら、あなたは株式相場で正当な利益を得ることなど、決してないだろう。

売り買いのベスト・タイミング

つまるところ、もし、なぜこの株を買いはじめたかを知っていれば、いつ手放したらよいかも自動的にわかるだろう。さて次にカテゴリー別の売りのサインを検討してみよう。

低成長株を売るとき

株価が30~50%値上がりするか、たとえ株価が下がってもファンダメンタルズが悪化すれば、売ることにしている。

優良株を売るとき

PERが通常の範囲をはるかに上回るときにはそれを売って、また株価が下がったときに買い戻すか、あるいは他の安定株を買うとよいだろう。

市況関連株を売るとき

明らかな売りのサインは、在庫が積み増しされていて、会社がそれをさばけないときである。これは、値下げと収益圧迫を意味する。私は常に、在庫の増加には注意を払う。駐車場が在庫の鉄塊でいっぱいになったときは、明らかに市況関連株を売る時期である。実際には、それでも少し遅いかもしれない。 

急成長株の売りどき

ここで肝心なことは、10倍株の候補を失わないようにすることである。一方、もし会社がおかしくなり、減益になると、投資家が株価につけいていたPERも悪化する。忠実な株主にとっては非常に高くつくダブルパンチである。

業績回復株の売りどき

業績回復で買った株は、業績が転換点を越えた時点で売るのが一番である。すべて困難な問題は過去のものとなり、以前の成長会社、市況関連会社などに戻っており、もう株主をまごつかせることもない。

資産株を売るとき

最近では資産株を売る最良の方法は、乗っ取り屋を待つ、ということに尽きる。 

株価についてよく聞く多くの馬鹿げた(そして危険な)話

原則として、株価がどこまで下がるかということに、ルールなど1つもない。

 

底値で株を買うという手法は、一般の投資家がよくやる手だが、たいては逆にひっかかってしまうものだ。下落している株を底値で拾おうというのは、落ちてくるナイフを素手でつかむようなものである。ナイフが地面に突きささり、しばらく揺れ動いた後、しっかり止まってからつかむのが、正しいやり方である。下落している株を急いでつかめばみじめな結果になる。

 

もし業績回復株に興味があるのなら、株価はずいぶん下がってしまっていると思うだけでなく、もっと確かな理由づけが必要である。たとえば業績が上向いていると確認できるとか、バランスシートを見て、現金だけで11ドルの価値はあるのに株価は14ドルしかしていないとか。

 

ポイントは、株価がどこまで上がるかということについては、はっきりした限界などない、ということである。ストーリーが正しければ収益は改善し続けるし、ファンダメンタルズに変化がないのなら「これ以上上がらない」などというのは、知ったかぶりの恐ろしい言い訳である。

 

私の経験では、落ち込んだ株は、戻ったら売ろうと決めている線まで戻ることはない。私はこういうケースになりそうなとき、その株は買い増しするほどよいと思うか?と自問自答し、答えがノーだったらただちに売り払うことにしている。

 

あなたが夢中になっているのに他の人は無視しているような株を保有し続けるには、たいへんな忍耐を要する。ほかの人々が正しくて、自分が間違っているのではと思い始めるだろう。しかし、ファンダメンタルズさえ約束さえているなら、我慢は必ず報われる。

 

誰かが利益を得たということは自分の損失だという考え方は、株式投資では健全な態度とは言えない。事実、そういう考え方は多勢のノイローゼ患者を生むだけだ。

 

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