Cork

ヨシヒロの読書ブログ

ヨシヒロの気が向いたときに読書記録をつけていくブログ(小説・文学・哲学・心理学・経営・経済・ビジネス)

エヴァンゲリオンの元ネタ!? 『図説カバラ世界入門』

f:id:noi2ar:20200129135825j:plain

前書き

今年の6月に劇場版最終作となる「シン・エヴァンゲリオン」が公開予定のエヴァンゲリオンですが、ちょうど私が主人公のシンジ君と同じ中学二年生のときに、TVアニメが放映されていたので、なかなか思い入れがあります。

 

旧劇場版の公開が1997年で、旧作の完結から20年以上経っているわけですから、私もおじさんになるはずです(笑)

 

そんなエヴァンゲリオンのOPと旧劇場版には上の画像のような「セフィロトの樹」とか、「生命の樹」とか呼ばれる樹木の画像が登場します。

 

これは、カバラというユダヤ教密教に登場する、神から人間へと至る世界の構造を表したものです。今日は、そんなカバラについての本『図説カバラ世界入門』から、私が興味深かった第一章と第二章について書いていきたいと思います。 

著者について

著者のゼヴ・ベン・シモーン・ハレーヴィは、スペイン系ユダヤ人で、サン・マーティン美術学校と王立美術アカデミーに学び、さらに西欧の「魂の学校」で訓練を受け、そこでカバラと占星学の勉強を始めたということです。劇場やグラフィック・デザイナーで活躍し、カバラのワークショップを運営した後、国際カバラ教会で指導者の養成にあたっているということです。 

『図説カバラ世界入門』の目次

第一章 起源

第二章 神話

第三章 霊系統

第四章 初期の歴史

第五章 後期の歴史

第六章 大宇宙

第七章 超自然

第八章 小宇宙

第九章 進化

第十章 教師

第十一章 魂の学校

第十二章 理論 

第十三章 実践

第十四章 悟り

第十五章 回帰 

第一章 起源

『聖書』は〈創造〉の物語で始まっているが、カバラの観点では〈創造〉の出現は第二段階目である。第一段階は〈無物状態〉から空間が出現する、ということで始まる。

 

つまり、〈絶対〉なる神がお退きになることで、空間の出現が達成され、〈存在〉がその空間へ生じてこれるようにしたのである。この虚空なる空間の中へ十の〈神聖な数〉、つまりセフィロトと、22のヘブライ文字が流出してきた。

 

この原初の空間が満たされると、次に霊的レベルの〈創造〉が流出してきた。『聖書』には、〈創造の七日間〉が大宇宙生成の過程として叙述されている。

 

そしてこの大宇宙内に、異なる三レベルの被造が存在できることになる。〈創造〉界では、すべてがいまだに霊的な状態である。次に〈形成〉界、別名〈エデン〉が登場し、それに続いて〈活動〉界の物質領域が登場してくる。

 

エデンの園〉におけるアダムとイヴの物語は神話である。つまり、人類が物質界へ下降してくる前の重要な出来事を詩的に叙述しているのである。

 

もう一つの例がバベルの塔の話だ。一文明の集合精神が〈神〉に挑戦し、〈天国〉に侵入できると信じ、この塔を建てた。

 

『聖書』において、太古の邪悪な時代において唯一正しい人であったイノックは、〈魂の学校〉を設立するように教示され、地上での使命が終わったとき、死の過程を経ずに〈天〉に上げられ、人間かつ大天使でもある存在へと変容し、メタトロンと名づけられた。このような者として、イノックなるメタトロンは完全に〈自己〉の悟りをした最初の個人であった。

 

下の図はセフィロトの樹の元型となる世界の流出・構造を示したものである。

 

f:id:noi2ar:20200130083609j:plain

第ニ章 神話

ある伝説では、アダムはイヴの前に妻をもっていたことになっている。リリスという名で、彼女はアダムの男性の力を獲得したいと願った。〈創造神〉は、人類の性のバランスを相殺することは穏やかに断った。

 

そこで自由意志を持っていたリリスはアダムから去り、〈悪魔たちの王〉であったアスモデウスの妻になった。彼女は彼を操ることができたのである。女性要因としての代替えにイヴが連れてこられると、リリスはイヴに嫉妬し、イヴの子供たちの破滅をいつまでも求め続けた。

 

アダムに先行して天使たちが存在していた。ところが、最高位にいた大天使ルシファーは、〈六日目〉にアダムの登場によって少々恥をかかされることになった。先ずルシファーは、どうして後から来た者が全天使の頭である自分よりも優位に立つのだ、と思ったのである。

 

そこで、この反応を予想していた〈創造主〉は、アダムとルシファーとでは、どちらがより偉大な力を持っているか、それを決めるコンテストをすべての〈天使群〉の前で行うように、前もって手配しておいた。

 

このコンテストで競争者がしなければならないことは、〈精霊界〉にいた、それぞれの〈野獣〉に名前を与えることであった。

 

創造主は、競争に趣を添え、それを活気づけるために、天使はどちらを支持するかその〈日〉は選択しても良い、と宣言した。大宇宙の機能だけである天使は、この時だけその状態を越え、自由意志を発揮するのが許されたのである。

 

プライドの塊であったルシファーは、宇宙の最高ポジション争いで競争相手となったこの人間を、楽に出し抜けるものと思い込んで、その挑戦を受け入れた。

 

各動物がそれぞれ連れ出されて来ると、アダムは、神の映しの最も整った像として創造性という特別の能力を持っていたので、何の問題もなく各動物を名づけていった。一方ルシファーは、この創造性というものを持っていなかったので、一音すらも想像して発することができなかった。人類だけがこの能力を持っていたのである。

 

ルシファーはただ光り輝く大宇宙の公僕で、すべての決まりを知っているだけであり、いかなる想像力も持っていないということが明らかになった。このようにしてルシファーは、全天上集団の前で自尊心を傷つけられた。

 

ルシファーを支持した天使たちは憤慨した。その結果、三分の一の〈天使群〉は突如反抗して、彼らのリーダーと共に〈天国〉を去った。こうして反抗した〈天使群〉は、自らの選択で魔軍と成った。

 

〈聖なるお方〉は計画してこの状況を引き起こされたのである。〈存在〉内での腐敗、堕落、退廃、また傷物とか不要副産物などを取り壊して排除するためには、大宇宙での破壊要因が必要であったからだ。

 

今や、〈サタン〉と呼ばれるようになったルシファーの役割は、人間に敵対することであり、そうして人類の高潔性を試すのであった。これは人類の進化に欠かせないことである。何故なら、抵抗や挑戦、また対立といったものがなければ、アダムとイヴはすべき事と、してはいけない事との区別ができなくなるからだ。

 

サタンとは、一個人の心にも共同体のグループ内にも湧き得る〈陰の〉原理である。誘惑に負けて〈神の法則〉に反する者は、誰だも悲惨な結果を味わい、それで何が何でも進化の正当な路線に戻らざるを得なくなる。この事実こそが〈悪〉の存在理由なのである。

 

聖書が述べるように「皮衣」を身に着けることによって、アダムとイヴは四世界の内で一番下の世界へ入り、肉体を与えられることになった。物質の世界へのこの下降は、人類の旅の四行程で最初の行程となる。第二番目の行程には肉界、心界、また霊界と、それぞれの成長発達に努める旅の行程があり、この行程で〈神の国〉に向けて徐々に高揚する。

 

このようなゴールを達成するには、明らかに一度きりの人生では無理である。ゆえにカバラは再生の考えを受け入れる。つまりカバラでは、魂は、死後一定期間その前の人生を振り返り反省した後、再び新たな肉体を与えられて誕生して来る、と考える。

 

カバラでは輪廻転生を〈ギルグリム〉と言うが、何代にも渡った輪廻転生の過程を通り過ぎて、さらに多くを学んだ者は、〈悟り〉への〈道〉を歩んでいる他の人々の手助けができるようになってくる。この手助けを行う行程を第三番目の旅路とみなす。

 

最後の旅路は、〈存在〉の鏡の中に、〈神〉が〈ご自身〉をご覧になるのをお手伝いし、〈時の終わり〉に〈絶対〉のもとに全人類が帰還する〈万人復活〉の旅である。

 

伝説によれば、〈神〉はアダムとイヴが高次元界へ戻るのを援助するため、彼らに或る一冊の本を与える目的で「神の秘密」という名の大天使ラジエルを送り出した、と言われている。

 

その本には〈現実〉の最高から最低のレベルまでに渡って架けられた巨大な梯子とその使い方が語られていた。その結果、アダムとイヴはその梯子とその使用法を知ることになる。この本の〈知識〉がイノックによりアブラハムに与えられ、一神教神秘主義の土台と成った。

まとめ

カバラでは、世界創生の後、創造界から活動界まで四つの世界が現れます。アダムとイヴは原罪によって楽園を追放され、一番下の活動界にまで落とされてしまいます。しかし、神はセフィロトの樹に梯子をかけることによって、人類が神の領域に回帰する方法を残されています。

 

つまり、エヴァンゲリオンの旧劇場版で「人類補完計画」として語られていたものは、活動界に落ちた人類が神の領域へと回帰する計画であったと言えるでしょう。

 

旧劇場版では、シンジ君がそれを拒絶することで、人類は活動界に留まることになりましたが、「シン・エヴァンゲリオン」でこのモチーフが再度用いられるのか、用いられるならどのようなエンディングになるのか、6月の公開をこのような視点から見てみるのも面白いかもしれません。