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ヨシヒロの読書ブログ

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日本経済の救世主!? 『MMT(現代貨幣理論)とは何か』④

前書き

続いてMMTとは何か』の第一部の第三章について書いていきたいと思います。  

第一部 MMT貨幣論

第三章 主権通貨国における政府の機能

自国通貨の中でも、変動相場制下の不換通貨を「主権通貨」といいます。

 

負債が国債のような通貨以外の場合、国家にとっての義務の履行とは、自らの別の負債である通貨を発行して引き渡すことを意味します。他方で負債が通貨の場合、納税その他の国家に対する支払い手段として通貨を受け取ることで、国家の義務は履行されます。いずれの行為も、物理的あるいは対外的な制約は存在しないのです。

 

したがって、政府は債務不履行を起こすことなく、そうしたプロセスを延々と繰り返すことが可能です。したがって、主権通貨国の政府には、常に自国建ての全ての支払いを実行する「支出能力」があるという結論が導かれます。

 

MMTによれば、国家にとっての貨幣制度の目的は、モノやサービスといった実物資源を政府部門に動員し、それを使って何らかの公共目的を達成することにあります。そして、動員する際の支払手段として機能させるため、国定貨幣に対する需要を創造するのが租税の役割です。

 

主権通貨国の政府の場合、通貨発行をいくらでも増やすことができるため、支払能力自体が制限されることはありません。しかしながら、通貨に対する需要が乏しければ、モノやサービスを政府に売却して通貨を手に入れようという売り手が思うように現れず、当初の目的である実物資源の動員が不十分なレベルにとどまる可能性があります。

 

この場合、政府としては、より多くの売り手を確保するために購入価格を引き上げて、より多くの通貨を支払うことが考えられます。この結果、今までの価格では不満だった新たな売り手が出てくれば、価格の引き上げは功を奏したことになります。

 

ところが、それも行き過ぎて、人々の需要と比べて過剰に通貨が発行されるようになると、今度はいくら価格を引き上げても売り手が増えず、単に物価の上昇すなわちインフレを加速させるだけかもせれません。そうなると、支払通貨額を増やしても政府によるモノやサービスの購入量は全く増えず、「実物資源を政府部門に動員する」という本来の目的も達成できなくなります。

 

こうした場合は政府支出を増やすのではなく、むしろより多くの税金を課し、通貨に対する需要を増加させるべきである、というのがMMTの見解です。これは、財務上の支出能力に制限がない主権通貨国の政府であっても、徴税能力や民間の供給能力とのバランスによる、いわば「実物上の支出制約」は存在することを意味します。MMTによれば、その目安になるのがインフレ率なのです。

 

家計や企業との類推からしばしば生じるのが、「政府が支出をする前には、税金という『財源』が必要である」という議論です。しかしながら、主権通貨国の政府であれば、支払手段である通貨を自ら発行できるため、財源も資金調達手段も必要ではありません。