日本経済の救世主!? 『MMT(現代貨幣理論)とは何か』③
前書き
続いて『MMTとは何か』の第一部の第ニ章について書いていきたいと思います。
第一部 MMTの貨幣論
第ニ章 預金のメカニズム
現代の経済において、民間銀行の預金は貨幣として、ある意味では通貨以上に重要な役割を果たしています。
中央政府や銀行以外の個人や法人が保有している貨幣残高の合計を「マネーストック」といいますが、例えば日本の場合、そのほぼ九割を民間銀行の預金が占めています。
さらに、民間銀行の預金残高は、中央政府や中央銀行が発行した貨幣の残高である「マネタリーベース」のおよそ2.4倍に上っています。
したがって、預金の性質や機能について知ることは、現代における貨幣のはたらきを理解する上で極めて重要であると言えるでしょう。
ところが、「預金がどのように発生するか」についての説明は、MMTと主流派経済学では全く異なります。
主流派経済学では、「民間銀行に外部から新たに通貨が供給されると、その一部を準備金として貸出が行われ、その結果預金という貨幣が生み出される」というメカニズムが想定されています。こうした考え方は、「外生的貨幣供給論」と呼ばれています。
なお、主流派経済学では、外部から通貨が供給されれば、銀行は準備金に相当する額を除き、残りすべてを貸出に回すと想定されています。そして、マネタリーベースとマネーストックの間には、「貨幣乗数」という比例関係が成立するというのです。これは「貨幣乗数理論」と呼ばれています。
貨幣乗数理論では、中央銀行はマネタリーベースの供給を操作することで、マネーストックを制御できるとされています。
では、MMTは預金の発生メカニズムをどのように説明しているのでしょうか。
銀行は外部から通貨を供給されることなく、借入金を購入するためには、銀行口座上で、貨幣として機能する自らの債務証書である預金を入力するだけです。
そして、「貨幣乗数」のメカニズムは存在せず、マネーストックがマネタリーベースの発生要因となります。なぜなら、銀行貸出によってマネーストックが増えれば、その分だけ銀行口座からの現金引出しも多くなるため、民間銀行はその備えとして通貨を手当てすることが必要になります。すると、それに応じる形で、民間銀行名義の中央銀行当座預金であるマネタリーベースが中央銀行によって供給されるのです。
要するに、借入れのニーズがなければ銀行貸出が実行されないため、マネーストックは増加しないので、マネタリーベースを増やしても比例的な関係は成立しないのです。
このように、マネーストックが中央銀行からの通貨供給ではなく、借入れその他の経済活動内部における資金需要に基づいて変動するという考え方は「内省的貨幣供給論」と呼ばれており、MMTが属するポスト・ケインジアンの間では概ね共有されています。
では、主流派経済学とMMT、どちらの見方が正しいのでしょうか。
実は、銀行業の実務に精通した中央銀行や民間銀行の関係者は、いずれも明確に主流派経済学の見方を否定すると共に、MMTの見方を支持しています。