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ヨシヒロの読書ブログ

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まずはアパート一棟、買いなさい!

前書き

株式投資のめぼしい本をだいたい読んでしまったので、今日は少し興味のあった不動産投資で有名な本『まずはアパート一棟、買いなさい!』 について書いていきたいと思います。

序章 なぜ不動産投資なのか?

メリットはお金が借りられることと安定性

不動産投資の最大のメリットは、銀行など金融機関からお金を借りて、つまり他人の資本で勝負することができるという点です。

 

不動産投資の場合、購入する土地や建物の価値と、借りる人の信用力を担保に融資を引くことが可能です。なぜなら、もしも借りた人がお金を返せなくなった場合でも物件の価値はゼロにはなりませんから、貸した側はそれを差し押さえることで貸し倒れのリスクを軽減できるからです。

 

なお銀行によってはノンリコース・ローンと呼ばれる、経営に失敗した場合はその物件を銀行に差し出すことでチャラになるという商品もあります。

自分の努力次第で利回りを上げられる

不動産の場合は、買った物件の価値を簡単に高めることができます。駅からの距離や日当たりといった立地に関してはどうしようもありませんが、リフォームを施したり、設備を充実させたりすることによって、「家賃の額を上げる=利回りを上げる」ことができるのです。

 

古ぼけた建物でも、外壁を塗装するだけで見違えるようにパリッとした印象になりますし、和室を洋室に変更したり、間取りそのものを変更したりすることで、物件はいくらでも生まれ変わります。

 

なにより、そうした自分の裁量がダイレクトに利回りに反映されることが、不動産投資の醍醐味だと思います。

 

自分の物件の入居者になるのはどういう人か、入居者が何を求めているのかを日々勉強し、知恵を絞って努力をすればするだけ、絶対にそれは報われます。実際、かけた費用の分だけ自分の物件がきれいになり、グレードが上がっていくのがはっきりと見て取れますから、すごくやりがいがあります。そうした努力によって、入居者が自分の部屋を気に入って選んでくれたときの喜びはひとしおです。

 

事業経営者としての手腕を思うように振るうことができ、それが入居者と自分の双方の喜びとなることも、僕が不動産投資を好きな理由のひとつです。

不動産投資は「自動操縦」ができる

不動産投資が決して楽なわけではありません。物件を購入して経営が軌道に乗るまではかなりたいへんです。いい物件を購入するために情報収集は欠かせませんし、これはと思ったら下見に行き、現地でさらに生きた情報を集め、売り主との値段交渉をし、融資を取り付けるために銀行と渡り合ったりというのは、非常に大きなエネルギーを使います。また、どこの不動産会社に管理を任せるかの選定や、すぐにリフォームが必要であればリフォーム業者も決めなければなりません。多くの不動産会社に当たって話を聞いたり、相見積もりを取ったりしていく作業も、なかなか苦労するものです。

 

しかしその苦労を乗り越えて、物件を購入し、信頼できる管理会社とリフォーム業者が得られれば、それはすなわち自分の「チーム」になります。そして物件が稼働しだせば、入居者募集やクレーム対応、退去の立ち会い、リフォームなどは、すべてそのチームに任せられます。年々仕事の依頼が多くなれば、大家さんとチームの信頼関係は強固になり、物件を所有していることすら忘れてしまうくらいに楽な状態を作り出すことが可能です。

不動産投資の5つのリスク

①空き室リスク

どんなに立派な建物や便利な土地であっても、それらを所有するだけでは利益は上がりません。たとえ利益が上がらなくても、固定資産税や都市計画税といったランニングコストは容赦なくかかってきますから、空室リスクこそ不動産投資の最大のデメリットといえます。しかしながら、大前提として需要の見込める場所に物件を持っていれば、大家としての経営手腕やセンスによって満室経営は十分に可能です。

 

風評被害リスク

株式投資では企業倒産のリスクがありますが、不動産の場合は倒壊、火事、地震といった危険には、保険に加入することである程度は対処できるので問題ありません。ただし怖いのは、自殺や死亡事故、殺人事件などが起こった場合です。

 

それが原因で入居者が出ていくことは十分に予想できますし、次の入居者に対して説明する義務が生じますから、空き室が続くことも考えられます。それも、事件や事故のあった一室だけでなく、一度悪い評判が立ってしまうと、建物全体がいつまでも風評被害にさらされることも……。

 

流動性の低さ

株式投資やFX投資であれば、何かの事情で急に現金が必要になったらすぐに現金化できますが、不動産の場合はそうはいきません。高額な取り引きになりますから買い手も慎重ですし、売りに出してから決済まで、早くても1ヵ月はかかるでしょう。現金ではなく、融資を受けてローンで買うということになると、さらに長引きそうです。

 

④取り扱う金額が大きい

不動産投資では取引金額が大きいので、万一失敗してしまった場合には容易にリカバリーができません。簡単に売れるものでもないので、すぐに見切りをつけて別の物件を買うというわけにもいきません。

 

また、融資を受けて購入する場合、長期間返済の債務を負い続けることもリスクとなります。特に変動金利での返済比率が高い状態での借り入れであると、その危険度も高くなります。リスクを嫌って自己資金の割合を増やせば、自己資金の大半をその物件に固定させることになり、予期せぬ支出や新しい物件の購入時に足を引っ張られることになりかねません。

 

⑤人づき合いの下手な人には向かない

賃貸経営は信頼が置ける管理会社やリフォーム会社などといったアウトソーシングに頼る部分が大きいので、その仕組み作りが苦手な人にはリスクとなるかもしれません。

第1章 地方の一棟アパートか都心の築古アパートを狙え!

まずは一棟アパートから始めるべし

不動産投資とは、「将来の経済的安定」のために行う事業なのですから、いかに効率的に収益を上げるかが大切です。儲けるなら利回りが高くなければ意味がありません。利回りの高い物件にはそれなりのリスクがありますが、それはたいてい経営者の努力次第で回避できるものだと僕は考えています。

 

持たざる者には持たざる者の戦い方があります。持たざる者はそのスタートラインから不利な状況ですから、月並みな戦い方ではダメです。取れるリスクは進んで取り、知恵を絞って努力することで将来を切り開かなければなりません。

 

ですから、やるなら最初から一棟アパートです。

 

それも少なくとも利回り15%以上、できれば20%前後の高利回りの物件を狙います。

 

もしも物件価格1500万円で利回り20%のアパートを手に入れることができれば、利息や税金、リフォーム費などを引いても、実質利回り15%程度で運営できます。満室で運営できれば6~7年で物件価格の回収を終え、無借金で年間家賃収入300万円が手に入ることになります。

 

区分所有マンションの場合と比較すると、一棟アパートがいかに効率よく儲かるかがわかるでしょう。

投資を始める前に戦略目的を設定すべし

僕が考える経済的な安定を得られるレベルとは、10年後に無借金で年間家賃収入を1000万円、市場価格数千万円の実物資産(不動産)を

保有することです。

 

購入する物件の利回りを17%とした場合、次の3ステップで達成できるイメージです。

 

①1600万円のアパートを1棟購入(利回り17%で満室時の年間家賃収入272万円)

②次にもう1棟同じく1600万円のアパートを購入する

③1200万円のアパートを2棟購入(利回り17%で満室時の年間家賃収入544万円)

 

そうすれば10年後には、「無借金で年間1000万円の家賃収入と数千万円の実物資産」という目標をほぼ達成できます。これは理想的に進んだ場合ですが、決して非現実的な話ではありません。

 

不動産投資は、手軽に始められる株式投資などと違い、事業ですから、あらかじめ長期の事業計画を描いてから始めるに越したことはありません。投資の目的地がどこにあるかによって、取るべき戦略は違ってきます。

 

もしも「プラスで毎月25万円」でよければ、最初に1500万円の一棟アパートを買うだけでいいで

すし、「プラス毎月50万円」を目指すのであればさらに2棟目を買い進めた時点で終わりにすればいいでしょう。「プラス毎月50万円」ならば利回り20%でなくてもいいと思います。利回りの高いものは「築古」「修繕費用」「空室」などそれだけのリスクがあります。1500万円で利回り20%の物件ではなくて、2000万円で利回り15%の物件を2棟買って、満室に近い経営をしていけばいいわけです。

 

なお、無借金経営まで10年というのは、最速のイメージですから、これは20年後でもかまいません。そうなるとある程度繰り上げ返済もして、ローン残高というリスクを減らしつつ、時間的に余裕を持って物件を増やしていけばいいということになります。

 

自分の目標が明確であれば、それを達成するために適切な戦略を描くことができますし、個々の物件をどういった戦術で経営していくかも自然と答えが出てくるでしょう。戦略や戦術が適切ならば、最初は小さい規模から始めても、徐々に拡大していけるでしょう。

 

あなたは10年後、20年後に、どのくらいの収入得ていたいですか? それを自分自身に問い抱えてみることから始めてください。

狙うは地方か、都心の築古一棟アパート

それでは具体的に、「10年後に無借金で年間家賃収入1000万円」という目標を達成するために、どういう物件を買うべきなのかについて説明しましょう。

 

狙いはズバリ、以下の2つのどちらかです。

 

①地方の一棟アパート

②都心ならば築古の一棟アパート

 

いずれも購入価格1000万~2000万円の間で、利回りは15%以上、できれば20%くらいを目標としたいところです。

 

アパートで1000万~2000万円の物件というのは、不動産投資の世界ではかなり安価な部類です。それほど所得の多くない人であれば、このラインが現実的に買える物件だと思います。

 

なぜ地方なのか、なぜ都心の築古なのかというと、これは単純に、その条件でなければ高利回りを得ることが難しいからです。利回りの高い物件というのは、言い変えればそれだけリスクの高い物件ということです。そのリスクをしっかりと見極めて、努力によって克服できるのであれば、むしろリスクを取っていこうというのが、僕の提唱するやり方です。

 

まず地方の場合は都心のように人がどんどん集まってくるわけではないですから、入居付けに不安があります。半分以上も空室で売りに出されているような物件も多く、それでは買い手がつかず、必然的に安価で利回りも高くなるというわけです。

 

地方の場合は、のんびりした資産家の高齢大家さんが多いですから、競争相手が少ないということもプラス要素として挙げられます。

 

逆に都心の築古物件の場合はそうかというと、地域としては賃貸需要が見込めるので、立地がよければ入居付けの苦労はさほどのリスクではないと思います。

 

ただし、建物には「法定耐用年数」というものがあり、木造住宅の場合は22年と決まっています。もちろんその期間を過ぎているから住めない、建て替えなければならないといったことはありません。世の中には築50年や100年といった家もゴロゴロあります。でも法定耐用年数を過ぎた築古物件というのは、減価償却資産としての価値がほとんど残っておらず、金融機関の融資が付きづらいというデメリットがあります。

 

また、手間をかけてリフォームをしていないと、それなりに古ぼけてきて、入居者にも敬遠されがちです。そのために安価で売りに出されるのです

 

しかし金融機関がどう評価するかは、入居者には関係のないことです。法定耐用年数が過ぎていても、建物には住めるわけですから。外壁塗装からきちんとリフォームして、魅力的な物件に生まれ変わらせることができれば、築年数はそれほど関係ないと思います。

 

また都心のいいところは、地価は高いけれでも面積は狭いので、それほど固定資産税が高くないことも挙げられます。

利回り以外に「イールドギャップ」を重視せよ

「イールドギャップ」とは、利回りからローンの金利を差し引いた数字です。

 

例えば、利回り20%の物件を、金利5%のローンで買った場合のイールドギャップは15%です。利回り15%の物件を、金利3%のドーンで買った場合は12%となります。

 

僕の経験からいえば、このイールドギャップは最低でも12%は欲しいところです。

 

利回りそのものだけに注目するのではなく、ローンの金利から逆算して考えることも必要です。そして、金利の低いローンが組めず、十分なイールドギャップが取れないのであれば、その物件の購入を 潔く諦めることもひとつの勇気かと思います 。

自己資金に最低300万円は用意する

1000万~2000万円の物件を買って運営していくためにはどのくらいの自己資金が必要になると思いますか?

 

僕の経験から得た感覚では300万円です。これくらいは最低ラインとして必要だと思います。

 

今の日本の経済状況では、数年前と比べて銀行の融資は積極的になっていますが、それでも物件購入価格の満額融資、すなわちフルローンを引くのは難しいと思います。しかも地方の物件や都心の築古物件というのは、なおさら融資を引きづらいでしょう。

 

たとえフルローンの融資を受がけられたとしても、物件購入価格が上限です。購入に当たっての諸経費は自己資金でまかなわなければなりません。仲介業者への手数料、ローン手数料や保証料、登録免許税や司法書士への報酬、固定資産税、都市計画税印紙税、さらに火災保険料など、だいたい物件購入価格の5~7%程度が必要です。また、すぐにリフォームが必要な場合もありますし、数ヵ月後に支払う不動産取得税や当面の運転資金なども考えたら300万円あれば安心できるかと思います。

 

さてフルローンを引けない場合は、自己資金から頭金を捻出しなくてはなりません。頭金の目安を10分の1とすると、150万円を頭金にローンを組み、残りの150万円は前述の諸経費で消えていきます。運転資金やリフォーム資金は残りません。現状で入居率がよければ所有権を移転して1ヵ月後には家賃が入ってくるので運転資金のめどは立つかもしれませんが、空室だらけでリフォームしなければ貸せないような状況であれば、別途リフォームローンを組んで、修繕費に充てる必要が出てきます。

 

リフォームローンは取得した物件を担保に、おそらく問題なく引けると思いますので、やはり自己資金は300万円が最低ラインとして必要だという計算になります。

第2章 買ってもいい物件、買ってはいけない物件

物件探しのコツも「ニッチで勝負!」

これから1棟目を買おうという人であればインターネットで探すのが効率的です。さらに余裕があれば、手間をかけて未公開物件を探すという順番で十分でしょう。

 

僕の場合は、1棟目を購入するまで毎日5時間はネットに張り付いて物件を探しました。そこまでやれとは言いませんが、一定の検索条件で毎日見続けていれば、その地域の物件の利回りや相場観が養われますから、数多くの情報に継続的に接するようにしましょう。

 

基本的にチェックすべきは投資家向け収益物件専門のサイトですが、掘り出し物をみつけるなら「Home's」や「アットホーム」といった大手ポータルサイトのほうがチャンスはあると思います。なぜなら収益物件専門サイトに掲載されている物件は、既に”投資家向け”といいうフィルターがかかっていますので、投資家が集まりやすいですし、いい物件が出た場合に競争が激しくなるからです。時間勝負になってしまうと、初心者には不利です。

 

僕は、普通の利回りの物件でも、掲載日に注目することをお勧めします。掲載してから長い時間たっている物件というのは、ずっと売れ残っているわけで、そこに値引きのチャンスが出てきます。当然ある程度の利益を見込んで値段を付けるわけですが、あまりに長い期間売れず、問い合わせもほとんどないような状態ですと、売主も弱気になっているものです。相続で手放すのであれば、その期限も近づいて焦っているかもしれません。早急な判断が必要な時間勝負は初心者には不利ですが、相対取引でゆっくり交渉を詰めていけます。もともと高利回りの物件を高利回りで買うのではなく、普通の利回りの物件を高利回りで買うのが最上の策ではないでしょうか。

 

またもうひとつ、これは築古物件を探す際に限定したテクニックですが、「Home's]や「アットホーム」「Yahoo!不動産」で検索条件を「土地」として探すという手があります。あくまで土地として売り出していても、上に古家が立っているケースがよくあるからです。売主が”価値なし”と判断している建物ではありますが、木造ならばリフォームすればたいていなんとかなります。その建て壊し費用も値引き交渉して、リフォーム費用も入れて十分な利回りが出るのなら、お勧めだと思います。

地方物件を買うならエリアの力を見極める

その地域の産業構造や人口動態といったことは、ある程度インターネットで調べることができますし、下見の際には必ず市役所に足を運んで、都市計画や産業の振興など調査しましょう。不動産の大手ポータルサイト「Home's]では、空室率や家賃相場、希望の間取りや家賃、地図上でよく閲覧される物件の多い順に色分けして表示するサービス(賃貸需要ヒートマップ)もありますので、それも参考にするといいでしょう。

 

なお僕自身は、企業城下町や大学付近のエリアは避けています。そういう「○○があるから安心」というエリアは、そもそも「ニッチで勝負!」の精神に反しますし、当てが外れた場合のリスクが大きすぎるからです。

 

考えてみると僕が物件を持っている地方は、特なにがあるというわけではない、いわば「陸の孤島」のような場所ばかりです。それでも家賃を低めに設定したり、魅力的なリフォームをしたりすることで入居者は呼び込めます。

 

最後に、地方に物件を買うなら、基本的に土地鑑のあるところに買ったほうがいいと僕は思います。いくら利回りが高くても、まったく見ず知らずの土地に買うのはやめておいたほうが無難です。またあまり遠方に買うのも、最初の一棟目は管理会社探しやリフォーム工事などの関係で、何度も現地に足を運ぶ必要に迫られるでしょうから、時間や手間、移動費のことを考えてもやめておいたほうがいいと思います。

地方に物件を買うときの条件

地方に物件を買うとき、僕が重視しているのはまず部屋の広さです。狭いものはダメだと思います。最低限、「単身者用であっても一戸当たり8坪(約26.4m^2)」は欲しいところです。

 

あまりに広くても退去したときのリフォーム費用がかさむので、それくらいの広さが適当かと思います。いざとなれば部屋を仕切って2人でも住めるので、入居者募集の間口が広くなります。

 

都心では15~16m^2からが合格ラインといわれますが、それは立地の便利さで需要があるわけです。地方ではそもそも広いのが当たり前ですし、移動の手段は車というところが多いので立地の優位性はあまり望めません。地方で狭い部屋が勝負するには大幅に家賃を下げるしかありません。家賃を下げると利回りが下がりますから、そういう勝負の仕方しかできない物件は買うべきではないでしょう。

 

次に、その地方がいわゆる「車社会」である場合は、「全世帯分の駐車場を敷地内に確保できること」が僕の中の必須条件です。それさえ満たしていれば、駅からの距離はほとんど気にしません。

 

地方でもバスや電車などの交通機関がしっかり発達していて、必ずしも車社会でないところもありますから、そこはしっかり調査して、駐車場の有無が入居付けに影響しない確信が持てれば買ってもいいと思います。

 

さらに、これは都心に買うときも同じなのですが、建物のボリュームは大きすぎないほうがいいと思います。なぜならボリュームの大きい物件は、なにかあったときのインパクトが大きくて、またなにかと経費がかさむことが多いからです。

 

間取りが多いと壁面の施工面積が増え、またリフォームの中で扉や引き戸といった建具というのが、かなりの費用を食うからです。部屋数が増えるとそれだけ建具の数も増えます。

 

税金の面でも、ボリュームの小さいものはそれだけ固定資産税などが安く済みます。

 

また売りたくなった場合にも、小ぶりな物件は現金で買える人が多いので売りやすいというメリットがあります。

都心の築古木像アパートはボロくても問題なし

次に、都心の一棟アパートについてお話します。都心で2000万円以下で買えるようなものは、おそらく築30~40年は経過した築古物件が多いと思います。そうした物件は法定耐用年数が過ぎているので融資が付きづらく、見た目や間取り、設備も古くさく、再生させるには大規模なリフォームが必要になるので安く売りに出されるわけです。これは、はっきり「ボロ物件」といってしまっていいでしょう。

 

しかし僕に言わせれば、ボロ物件だからこそ勝機があります。都心の物件の場合は、最寄駅の大きさや駅からの距離といった立地の利便性が、たいていの難を吸収してくれます。そうした立地のいい場所に、安く物件を仕入れて、きれいにリフォームして貸し出せば、とんでもない優良物件に仕上がる可能性があるのです。

 

基本的に内装はいくらボロくても問題ありません。リフォームでいくらでもきれいになります。そもそも木造アパートのいいところは、いくらでも修繕できてしまうところです。現在の日本のリフォーム技術は秀逸ですから、柱が腐っていても取り替えられますし、土台の部分がダメになっていても隣に別の柱を立てて補強できますし、ジャッキアップして土台そのものを入れ替えることですら可能です。

 

木造建築というのは、このようにあとからどうにでも補強や修繕が可能ですから、築古でも恐れることはありません。逆に鉄骨造や鉄筋コンクリート造のマンションンのボロ物件の場合は怖いです。鉄鋼は一回錆びたら直せないので、まったく修繕されず雨ざらしが長かったり放置されたりして、錆の浸食により主要構造部の強度が大きく損なわれている可能性があるものは手を出してはいけません。しかもダメージ部分が外観からはわかりづらいところも怖い点です。

 

木造の場合はむしろ、ボロければボロいほどライバルも少なく、また値下げ交渉にも応じてもらいやすいので「オイシイ」ともいえます。

 

ポイントはリフォームして生まれ変わったところをイメージできるかどうかです。そして、そのリフォーム費用がどれくらいかかるかもイメージできるかがカギです。リフォームすれば十分に満室にできる確信があれば、あとは建物の価格にリフォームの価格を乗せて利回りを計算して(家賃は近隣の相場でだいたい予想できるでしょう)、その利回りがどれくらい出るかで考えていけばいいわけです。 

瑕疵担保免責物件でも大丈夫

「瑕疵担保免責」を承知で買ったとしても、売主が宅建業者の場合、例えば建物の構造そのものに問題があったとか、シロアリが食っていて土台がガタガタだったとか、そういった重大な、しかも買うときには見えない瑕疵があったときには、補修工事や損害賠償、契約解除権を請求できます。そして個人間の取り引きでも売主が瑕疵を知りながら買主に告げなかった場合には、やはり責任を追及できます。

オイシイ物件の見分け方 

オイシイ物件というのは、それほど手間や時間、お金をかけることなく、満室にできて高利回りにできるものを指します。しかし時間と労力と費用がかかっても、リフォーム費を含めて20%以上の利回りが見込めれば、これは投資のうまみがある物件だと思いますし、15%しか出なくてもほとんど手間もお金もかけていないのであればオイシイでしょう。

 

そうしたオイシイ物件を見分けるには、現地調査が大事です。なぜ入居者が付かないのか、入居者視点でしっかりと分析しましょう。

 

このとき「駅から徒歩20分で遠すぎる」「線路沿いでうるさい」「日当たりが悪い」など大家側の努力ではどうにも克服できないマイナス面が主要因だとはっきりすれば、潔く諦めたほうがいいかもしれません。

 

そうではなくて、「単にボロい」「間取りや設備が古い」といったことであれば、これはリフォームでいくらでも克服が可能です。外壁をきれいに塗り直すだけで生まれ変わったようにきれいに見えますし、内装もいくらでもピカピカにできます。いくらでも手を加えられるのにやっていないことで損をしている物件というのは、かなりあると思います。

その物件はなぜ空室だらけなの?

また、建物や設備の問題ではなく、積極的に入居者募集を行っていないから空室だらけという物件もあります。よくあるのが、建て替える予定があって、退去者が出てもリフォームがほとんどなされず、空室のままという物件です。だからどうして空いているのか、おそらく仲介する不動産屋さんが現地に同行してくれるでしょうから、きちんと聞いてみましょう。年配の方の持っている物件ですと、建て替える予定があって募集をしていなかったという話はよく聞きます。「建て替えようと思っていたけど、もう自分も年で面倒だし売っちゃおう」という事情のようです。そういう物件は「オイシイ」ですよね。修繕費用や空室率の高さから、物件の価値がすごく低くなるので、非常に安く買えます。

 

このようにしっかり現地調査をすることで、物件の持っているポテンシャルを把握していくことが大事です。現状を見てダメな物件が、必ずしもダメなわけではありません。特に、売主が全然努力をしていないからダメという物件があるわけで、そういうダメ物件はオイシイです。ボロければボロいほど、空室は多ければ多いほど、安値で売り出されるために、修繕して入居者を募集すれば、投資物件として驚くほどの爆発力を持っている場合もありますよ。

買ってはいけないボロ物件とは?

内装がいかにボロくても、それは修復できるので問題はありません。でも建物の構造にかかわる部分は、しっかりと見極める必要があります。

 

軟弱地盤の上の傾いた物件はNG

まず、建物が傾いているものは避けたほうがいいです。わかりにくくて生活に支障がない程度であればあまり気にする必要はないかもしれませんが、ビー玉を転がすまでもなく見た目や体感として傾いているような物件は絶対に避けるべきです。現地調査の際は、ホームセンターで売っている「水平器」を持っていくといいでしょう。

 

建物に入ったときに湿気をチェック

また、湿気にも注意したいところです。地下水脈の上や雨のたまりやすい土地で、地盤から湿気上がってっきて、建物にこもっているような物件です。

 

見分け方としては、まず建物に入れば湿気がこもっているかどうか、ジメジメしているかどうかは感覚ですぐわかりますよね。柱が腐っていたり、色が変化していたり、湿気で壁紙がはがれていたり、ひどいと部屋の中がカビだらけになっていたりしますし、がけ地や傾斜地のふもとに建っている家で、床がズブズブに腐っている物件というのも見たことがあります。そういうものは一目瞭然でダメですね。

 

雨漏りと擁壁も要チェック

雨漏りが長期間放置されていたような物件も、避けたほうが無難でしょう。どこに水が回っているかわからず、思わぬところの柱が腐っていたり、構造体に二次被害が考えられるからです。特に鉄骨造の建物は錆びたら再生できないので、絶対に避けるべきです。木だったら腐っても再生できますが、その分費用もかかることを覚悟しましょう。

 

しかし、鉄の手すりや外階段が錆びているのは、当たり前のことですし、対処方法を知っていれば怖がる必要はありません。錆を落として下地処理をすればきれいに塗装できますし、腐っている箇所は溶接工事で入れ替えます。錆でボロく見えているのならば、その分値引き交渉すればいいかと思います。場合によってはきれいにするだけで入居率が大きく改善するかもしれません。

 

山や谷が多い土地であれば、擁壁にも要注意です。段々畑みたいな感じで家が建っているところの段々の壁のことを擁壁というのですが、それが手抜き工事だったり、古すぎたりすると適当に組まれている場合があるからです。そうなると、大雨が続けば土中の水の圧力に耐え切れずに擁壁倒壊を起こす危険性が出てきます。

 

シロアリ、基礎などは心配ならば専門家の調査を

シロアリに柱や壁が食われていそうなボロ物件であれば、現地調査にプロを連れていくといいと思います。見積もりだけならば無料のところもあります。もしも食われていて、駆除を入れて土台もやり替えたらいくらかかるという見積もりが出たら、それを根拠にさらに値引き交渉をすればいいでしょう。

 

僕の持論ですが、築古の場合は「何十年も建ち続けているというのが既に実績」です。その間に豪雨やら地震やらをくぐりぬけてきて、既に悪いところは出きっている状態ですから、これから新たに傾いたり沈んだりするとは考えづらいでしょう。木造の古い建物は、部屋が狭いだけにその分柱が多い構造なので、意外と丈夫だったりするものです。

 

結局はベースとなる土地が問題だといえます。水が溜まるようなところでは、地盤沈下や湿気、湿気を好むシロアリ、カビの繁殖など、まさに瑕疵の温床なので、そういう土地は避けるべきです。

マンションよりも木造アパート

そもそもマンションとアパートの違いは、その構造にあります。マンションは主に鉄筋コンクリート(RC)や鉄骨(S)、鉄骨鉄筋コンクリートSRC)で、アパートは木造(W)や軽量鉄骨(LGS)などです。

 

RCは木造よりも建物の価値が高いので、その分固定資産税が高くなります。

 

対して木造アパート、それも法定耐用年数を過ぎた築古ともなると、固定資産税はかなり安いです。イメージとしてはRCの5分の1から3分の1でしょうか。

 

RCのほうが法定耐用年数は長い分、1年に減価償却できる金額が少なく、かかる経費は多 く、ローンの返済も差し引くと現金はあまり多くありません。しかし中古の木造アパートは短期間で減価償却でき、なにかしらの大きな修繕があれば、その費用も減価償却資産として計上できますし、なにより固定資産税の安さは見逃せない要素です。 

 

また、RCの場合は維持修繕費が木造よりも確実にかかります。

 

いくら地方であっても2000万円以下で買えるマンションというのは相当なボロ物件だと思いますが、そもそも人に貸せる状態にするためのリフォーム費用も、木造よりRCのほうがはるかにかかります。

物件に惚れるな!難があれば深追いは禁物

そこまで深追いしなくても、物件はいくらでも、あとからあとから出てきます。そこで妥協しなくても、「ああ、実際はそんなにリフォーム費用がかかるのか。それなら縁がなかったんだな」とシビアな気持で、常にニュートラルに判断するように心がけましょう。

「融資が引きやすい」という理由で買うのは危険

物件を買うには、普通は金融機関から融資を受ける必要があります。ただ僕が勧めるような、利回りの高い地方の物件や都心の築古物件には、金融機関はあまりお金を貸したがりません。なぜなら資産性が低く、担保価値も低いからです。

 

しかし、「融資が引きやすいから」という理由で物件を買うのは、非常に危険です。なぜなら銀行が貸したがる物件は、資産性は高いですが同時に利回りが低い傾向にあるからです。つまり、買ってもそれほど儲からないのです。

 

資産価値が高いということは、それだけ固定資産税も高くなります。固定資産税は高いと満室家賃の1~2カ月分はかかります。さらに管理費として通常は家賃収入の5%を支払います。そのほか共用灯の電気代、給水ポンプの電気代、エレベーターがあればその電気代など、毎月2万~3万円の電気代が必要です。そのほかエレベーターのメンテナンス費、消防法に準じた消火設備や法定点検費用もかかります。

第3章 資産性が低くても、銀行から融資を引く秘訣

地元の地銀、信金信用組合から借りる 

融資が受けやすい状況とはいえ、僕が勧める地方や築古物件を狙う手法では、メガバンクからの融資は期待できません。「自己資金を3割用意してください」と言われるのが普通ですし、そもそも彼らのメガネにかなうような資産性の高いもので、利回りが高いというのはまずありません。

 

でも地方銀行、さらには地元の信用金庫や信用組合というのは、「地域密着型で、人を育てて地域に貢献する」という企業理念を掲げています。地方銀行となると融資基準は厳しくなってきますが、信用金庫や信用組合であれば、物件の法定耐用年数が過ぎた築古物件、再建築不可でも融資してくれる可能性があります。だから事業性に勝機を見出して、お金を借り入れることも可能だと思います。金利はやや高くなりますが、それを吸収できるくらいに利回りの高い物件を買ってイールドギャップを確保すればいいわけです。

 

ただし残念ながら、居住地とは離れた地方に物件を買う場合、信金や信組から借りるのが難しい場合があります。居住地の地元の信金や信組には融資可能エリアというのがあり、そのエリア外の物件には融資は付きにくいものなのです。また、物件の地元の信金や信組を利用したいと思っても、そこに住居や勤務先がないと難しくなってきます。

 

ほかの金融機関でもそうですが、いきなり出向いて融資を受けられるかというとなかなか難しいでしょう。でもきちんと事業計画書を用意して、不動産投資の趣旨や熱意をアピールすれば、可 能性は開けてきます。

日本政策金融公庫から借りる

民間の金融機関では融資が難しいという場合に頼れるのが、日本政策金融公庫です。これは2008年に設立された財務省所管の特殊会社で、使途が事業であれば個人でも借りられます。賃貸不動産経営というのは立派な事業ですから、メガバンクのように不動産投資だからと渋られることは基本的にはありません。

 

公庫は民業を圧迫せず、民間の金融機関では受け入れてもらえな案件のために融資を行うというのが原則ですから、収入が安定していないフリーランサーや、収入が低い人たち、自己資金が少ない人たちでも借りられる可能性があります。築古で再建築不可であろうと融資してくれますし、場所も関係なく、さらに固定の比較的低い金利で借りられるのがうれしいところです。

 

今では、後述する「新規開業資金」や「女性、若者/シニア起業家支援資金」の制度なら、古い物件に対しても17~18年の融資を出すことも珍しくなくなってきました。 

 

さらに公庫のメリットは、民間の金融機関では物件の購入価格までしか貸してくれませんが、公庫の場合はリフォーム費用や運転資金まで貸してくれることです。また、購入後に大規模修繕の必要性が出てきた場合にも、別途リフォームローンを組むことも可能です。借りるのにそれほどハードルは高くないですし、返済スケジュールの引き直しの相談にも乗ってもらいやすいですし、とても安心な借入先かと思います。

 

デメリットとしては、物件への評価が厳しいことです。例えば2000万円の物件に対して、民間の金融機関であれば7割前後、1400万円程度の評価を出すとすれば、公庫の場合は5~6割、1000万円~1200万円くらいのイメージです。こういうところで安全基準を厳しくしているようです。だから公庫を利用するなら、自己資金を多く用意しておいたほうがいいですし、共同担保に入れられる物件があれば有効活用したいところです。

 

なお、公庫にはいろいろな融資があって、僕が今まで説明しあてきたのは、「普通貸付」というものです。このほかに事業開始後7年以内の人に用意された「新規開業資金」や「女性、若者/シニア起業家支援資金」というものがあり、これらを利用すると各20年以内、7200万円まで融資を受けることができます。 

「融資を引く=購入」がゴールではない

1棟目を必死で満室経営することが大事です。最初に労力をかけて努力しておくと、空室を埋める自信もついてきますし、自分自身の経験値も上がっていきます。僕の経験でも、リフォームをして入居率を上げて、ローンも返しながらお金もそれなりに残してきて、高い税金も払って……そんなことが自分の自信につながっています。

 

事業ですから、購入したら終わりではありません。いかにきっちり稼働させるかが大事なのです。そうやって実績を積み上げていくことで、自信が生まれ、経験値も上がり、周囲の人への信頼感につながり、さらに事業を発展させていく力となっていくのです。

第4章 購入価格は自分で決める! 値切りの交渉術

賢い経営者ならば、売値では買わない

物件探し、下見と現地調査を経て、ついに「これなら買ってもいい」という物件が見つかったとします。このとき、売値でそのまま買ってしまうようでは、残念ながらあなたは経営者としてのセンスに乏しいかもしれませんね。

 

不動産には「定価」はありません特に中古の場合には、売主と買主が相対して取引をしてお互いに妥協点を探っていくもので、売値というのはあくまで、売主が「この値段で売れたらいいな」という願望でしかないのです。

 

融資を受けて買うのですから、利回りが高ければそれだけイールドギャップに余裕が出てきます。金利の高いローンでもその金利分を吸収できるわけで、どれだけ値引き交渉ができるかが、あなたの不動産経営に大きく影響するのです。

 

売主はたいてい、相続や借金整理など、なにかしらの「売らなければならない事情」を抱えています。そうした事情があるので真剣です。こちらとしてはなにも絶対にその物件にこだわる必要はなく、売り物件は市場にどんどん出てくるのですから、その意味では売主よりも立場は有利です。

 

その値引きも、不動産の場合は値引き幅がハンパではありません。1000万~2000万円くらいの物件であれば、百万円単位での値引きも当たり前です。

 

「物件に惚れてはいけない」のですよ。物件に惚れてしまい、大して値引きもできずに買ってしまうと、利回りが低くて苦労することになりますから。

値引き交渉ではブレないこと

値引き交渉で大事なのは、「ブレない」ことです。一番よくないのは、自分がいくらまでなら妥協できるのかをしっかり定めずに交渉に入ることです。

 

不動産投資は事業であり経営なのですから、収益を追求しなければなりません。収益性を上げるもっとも確実で有効な方法は、「安く仕入れる」ことに尽きます。だから利回りにはとことんこだわってください。

購入予算を算出するときの注意点

まず、物件を購入する際の諸経費は必ずかかりますので、これは最初から計算に入れておきましょう。火災保険や地震保険だけでも数十万円のまとまった出費になります。こうした保険料も含めていくと購入価格の6~7%程度はかかります。諸経費を考慮すると表面利回りから1%くらいは収益性が下がることになります。

 

1000万~2000万円程度の物件では、購入時に既に満室ということはあまりないと思います。リフォームして建物や居室の魅力をアップさせて入居者を引き寄せなければなりませんから、その費用も忘れてはなりません。特に築古物件は、何百万円もかけて大規模なリフォームが必要な場合があります。

 

さらに細かくいえば、購入後には管理会社への管理料、共用部分の光熱費、固定資産税や都市計画税などもかかってきます。管理料の相場は家賃収入の5%で、光熱費や税金は仲介業者を通じて売主に確認しておきます。また退去時にはリフォームが発生しますし、将来の大規模修繕のためにも家賃の5%程度は毎月修繕積立金をプールしておきたいところです。そこからローンの返済額を引いて初めて、キャッシュフローがいくらになるのかがわかるのです。

値引きを勝ち取るテクニック

その物件をいくらまでなら買えるか予算を決めたら、いよいよ値引き交渉開始です。

 

基本は、その物件の弱点をすべて洗い出して、相手にも同じ認識を持ってもらうことです。それには順番があります。

 

まずは駅から遠いとか、日当たりが悪いとか、家主の努力ではどうにもならないことから攻めます。「駅から遠いし、この場所ではちょっとこの値段では買えないかな……」と、これは軽いジャブ程度です。

 

そして個別の弱点を指摘していきます。「外観が汚いので塗装しなければお客さんが付かない」「設備が古いので交換しないと」「和式トイレを様式に」……など、弱点を思いつく限り指摘しましょう。このときのポイントは、「自分が持ち主になったら、ここをこう直す」ということをしっかり説明することです。「だからその分安く買わなければ割に合わない」ということを納得してもらえば、相手も気持ちよく値引きに応じてくれるはずです。リフォーム業者に見積もってもらった具体的な費用を出せば、相手も納得せざるをえないでしょう。

 

また、入居中の部屋は退去時にリフォーム費用が発生しますから、その分も値下げの根拠としましょう。仮にフルリフォームをする場合ワンルームでも20万~30万円かかったりしますから、4部屋入居中であれば、退去時に100万円前後の出費があるかもしれません。

 

値引き交渉ができるタイミングは、1回ではありません。購入に当たって、普通はまず「買付証明書」というものを入れます。最初の値引き交渉はたいていこのタイミングですね。そこで合意に達したら、次は「手付金」を入れて売買契約を結びます。並行して買主は金融機関から融資を取り付けて、それから決済となるわけです。

 

手付金を入れたあとでも、決済を終える瞬間まで、値下げ交渉のチャンスはあります。例えば「心配だからシロアリ業者に調査を頼んだら、やっぱり食われていたので駆除して柱も入れ替えないと」ということになったら、これも相手はその分を下げてくれるかもしれません。

 

また、売買契約を締結するまでの話ですが、金融機関の評価というのも有効です。売値1500万円の物件で、既に「リフォームに200万円かかる」ということで、1300万円に値下げしてもらっているとしましょう。ローンの申し込みをした銀行に「資産価値が低くて1000万円しか融資できないですね」と言われたら、それを根拠にまた値下げ交渉をすれば、さらに300万円というのは難しくても、100万円くらいは下がるかもしれません。売主にしても「そんな評価しか出ないのか……」と弱気になるでしょうから。

 

ただし、実際には売主と膝を突き合わせて交渉するわけではないというのが救いではあります。普通は売買を仲介する業者(=不動産屋)が間に入りますから、「ご相談させていただく」というスタンスは守りつつ、自分の主張を遠慮なくぶつけていけばいいと思いますよ。

有利な値引きをするには相手を知ること

トランプでもマージャンでもなんでもそうですが、勝負事で相手の手の内がわかっていると絶対に有利ですよね。

 

値引き交渉でも同様です。売主はなんらかの「売らなければならない事情」を持っているはずで、もしその事情がわかったとしたら買主は有利な立場に立てます。

 

例えば、持ち主だった人物が亡くなって相続が発生し、アパートを現金化することになった場合、相続税の申告・納付というのは、原則金銭で死後10ヵ月以内です。もしもその期限が迫っているとしたら、売主はほかに買い手が現れなければ、どんなに値引きをされても売ってしまわなければならないわけです。仕事で借金を抱えてしまって、不動産を整理しなければ現金が作れず、借金の支払期限が迫っているような場合も同様です。

 

さらに、相手が考えている「ギリギリこの値段なら売ってもいい」という最終ラインがわかったら、これは手の内が丸見えだと言えます。

 

そうした事情をどうやって知るかというと、その情報源は仲介業者になります。もちろん、右記のように洗いざらい教えてくれはしませんが、「なんでもおじいさんが亡くなられて売りに出ているそうですよ」とか、「このくらいまで引いてくれるんじゃないですかね」といった程度の情報であれば、下見の際にいろいろ質問するうちに明かしてくれる可能性はあります。仲介業者も売買を成立させて、手数料を稼ぎたいわけですからね。仲介業者を味方につけられると、さらに有利に交渉を進められます。

リフォームの見積もりも進めておく

購入を決意するまでには何度か下見をすることになりますが、有望そうな物件であれば、一回はリフォーム業者と一緒に下見をして見積もりを取っておきましょう。見積もりだけであれば無料ですし、その見積もりは値引き交渉の説得材料になります。また金融機関に対しても希望融

資額に近づけるための根拠となりますから、ぜひともやっておくべきです。

 

当面のリフォームにかかる費用はもちろんですが、それ以外にも大規模修繕をしたらいくらか

かるかも、見積もりの機会に聞いてしまいましょう。外壁や屋根、外階段、共用廊下、ベランダなどの防水能力上下水道管を含む給排水設備、浄化槽のエアポンプ、配電盤関係、消防設備、ガス給湯器などの消耗具合、それらを直す際の費用はいくらなのか、つまり将来のリスクが把握できます。

購入時の諸費用はこれだけかかる 

ここで物件を購入するときの諸費用について、詳しく解説しておきましょう。諸費用の内訳としては、以下7種類あります。

 

①仲介手数料

これは取引価格により法律で決まっています。不動産売買における仲介手数料を求めるには、以下の簡易計算式を知っておくと便利です。

 

400万円超であれば、「売買価格の3%+6万円」という簡易計算式が使えます。

 

②登録免許税

不動産の所有権の移転登記をする際に収める税金です。細かい計算方法は省きますが、1500万円の物件であればだいたい10万~20万くらいでしょう。

 

③不動産取得税

不動産を買うと必ず収める税金です。これも細かい計算方法は省きますが、1500万円の物件であれば、十数万円でしょう。

 

印紙税

売買契約書に貼る印紙の代金です。1000万円超5000万円以下の売買の場合、1万円です。

 

⑤ローン手数料

ローンで購入すると、事務手数料や保証料などさまざまな名目で銀行に手数料を支払います。だいたい十数万円でしょう。

 

司法書士報酬

移転登記やローンの抵当権の設定登記は、司法書士にやってもらうことになります。現金で買えれば自分で行うこともできますし、安くやってくれる司法書士を探して節約することもできますが、ローンを組んだ場合はたいてい銀行側が用意する司法書士に任せることになります。だいたい6万~8万円くらいになると思います。

 

⑦固定資産税および都市計画税の精算金

1月1日の所有者(売主)がその年の分を支払います。よって、年度の途中で売買した場合は日割りでそれを精算することになります。

 

すべての諸費用を合算すると物件購入価格の6~7%というのが一般的なところでしょう。登録免許税や不動産取得税は固定資産課税標準額に一定の数値をかけて算出するものなので、ケースバイケースで調べるようにしてください。物件ごとに幅が出ますから、固定資産税課税標準額を仲介業者に教えてもらって、早めに正確に把握できるようにしたほうがいいでしょう。

大家さんが入ったほうがいい保険

大家が入る保険は、入居者が入る保険とはやや性格が異なり、建物そのものにかける保険です。火災保険の場合には、火災のほか、落雷、風災、雪災などによって建物が損害を受けたときに、その補修費用が出ます。さらに住宅総合保険の場合は右記に加えて、建物外部からの落下、衝突、水濡れ、盗難による毀損、汚損、水災といった損害賠償にも対応しています。

 

また、オプションで施設賠償責任、休業家賃補償、死亡事故で損害を被った部屋の修理費用や家賃の損失を補償する特約も付けられます。さらに地震保険も付ければ、一通りのリスクには対応できると思います。

 

この保険金額は、規模や構造、その地域の保険料率によって変わってきます。1500万円くらいの物件なら、年間に直すと2万円くらいでしょう。火災保険ではなく住宅総合保険に入るとまた保険料は上がって、年間で2万5000円くらい。さらに地震保険にも入ると4万円くらいかと思います。

 

築古物件の場合は何があるかわかりませんから、火災保険ではなく住宅総合保険に入って、さらに地震保険にも入ったほうがいいでしょう。保険料は高くなりますが、リスクを考えたらそれは購入予算に含めておくべきです。物件購入の際には、保険料としてさらに数十万円は払わなければならないということを覚えておいてください。

第5章 物件管理はプロにお任せ! いい管理会社の選び方

物件の管理は専門家に任せる 

物件を運営していくということは、その物件を管理していくということでもあります。管理というのは建物もそうですし、入居者と賃貸契約を結び、毎月家賃を徴収し、遅れがあれば催促し、退去の際も立ち会って敷金の精算、入居者からのクレーム対応など諸々の業務がそれに含まれます。

 

管理料は月額家賃の5%程度が相場ですから、冒頭に書いたような業務をすべて代わってもらえるのなら安いものだと思うのですが、いかがでしょうか。

決済までに管理会社は決めておく

管理会社選びは物件の調査や値引き交渉、金融機関との融資交渉などと並行して進めて、決済までに決めておく必要があります。決済して自分の所有になったら、すぐに管理会社も替わって、契約の引き継ぎをするというイメージです。

 

普通は何も言わなければ、売買のときに仲介した元付けの不動産屋がそのまま引き継ぐケースが多いのですが、僕はそれをあまりお勧めしません。なぜかというと、その管理会社がよくなかったから、前オーナーが物件を手放さなければならなくなったかもしれないからです。

入居率が悪くて売却に至ったとすれば、大家の資質はもちろんでしょうが、管理会社の「客付け力」に問題があったのかもしれません。そのあたりは周囲の不動産屋から情報収集の際に、立地や建物設備、家賃設定に相応の入居率なのかを調査すればわかってくると思います。

 

もちろん管理会社に問題がなければそのまま引き継いでもらえばいいわけです。

管理会社は地元の会社のほうがいい

管理会社は遠隔地にあるというのはよくないです。住民からなにかクレームが入って、様子を見に行くということは割と多いですし、そのときに遠隔地ではついつい放置しがちになってしまうでしょう。一方でクレーム対応が迅速でないと入居者の満足度が下がり、それが退去につながっていくことは十分にありえますから、やはり管理会社は地元で探しましょう。

「ここに任せたい」いい管理会社の選び方

管理内容について、巡回はどれくらいの頻度でやるのか、共用部分や建物周辺の清掃は含まれるのか、別料金ならいくらなのかなど、そこも管理会社によってまちまちですので、比較検討の材料にしましょう。

 

そしてもっとも大事なのは、「大家の主導でリフォームを行えるかどうか」です。僕の提唱するやり方では、リフォームでいかに利回りを向上させるかが成功のカギですから、この主導権は絶対に自分で握らなければなりません。大家が自分で業者に発注してリフォームできるかどうか、必ず確認してください。 

第6章 大家さんの腕のみせどころ! リフォーム大作戦

自由な発想による「空間の企画力」が大事

満室経営を目指すうえで必要不可欠なのがリフォームです。物件の魅力を高め、入居者を呼び寄せ、家賃をアップさせるほどに手を入れれば収益性も向上させることができます。自分の思うままに裁量をふるって、それがダイレクトに反映されますから、まさに大家にとっては賃貸経営の醍醐味といえるかもしれません。

 

リフォームで大事なのは、「成約率を高める品質」と「空間の企画力」です。

リフォーム業者選びは相見積もりが鉄則 

物件購入後は、このリフォーム費が出費の大部分を占めることになります。安く、しかも質のよいリフォームをしてくれるリフォーム業者と信頼関係を築くことが、賃貸経営のカギを握るといっても過言ではないでしょう。

 

そうした業者をどうやって見つけるかというと、鉄則は「相見積もり」を取ることです。数多くの業者を呼んで、同じ条件でリフォームするとどうなるか見積もりをしてもらいその値段を比べるわけです。

 

住宅・建築業界では相見積もりを取るのが常識で、見積もり料金も基本は無料です。相手もそうされるのは普通のことだと思っていますから、遠慮することはありません。

 

大事なのは、最初に相見積もりであることをはっきりと告げること。

相見積もりで相場観を養う

相見積もりのいいところは、実際に業者を呼んで「ここをこう直したい」と相談をすることで、相場観を養えることです。

 

部材の価格はインターネットなどで調べられますから、それプラス人工代だと基本的に覚えておけば、相場がつかめるようになるでしょう。

 

職人が働いた作業料を「人工代」といいます。これはひとりの人に一日働いてもらって、およそ1万5000~2万50000円と幅があります。それはその業者の請負方針で決まっている場合もあれば、技術料に応じて腕の良い人は2万5000円で、スキルの低い見習の人だったら1万5000円となっている場合もあります。 

業者は値段で選んではいけない

相見積もりは値段だけでなく、これから自分の経営のパートナーとしてお願いできる業者を探す、いわばオーディションだと意識しましょう。

 

賢いやり方としては、「ぜひこの人にお願いしたい」という業者がいたら、相見積もりで出た一番安い値段を伝えて、「この値段でやってもらえますか?」と交渉することでしょう。これで受けてもらえればラッキーですし、多少は押し返されても、双方が納得できる金額で落ち着けばそれがベターです。

なにかと依頼しやすい地元の業者に頼むが吉

相見積もりを頼むときは、基本的には物件のある地元の業者に声をかけたほうがいいと思います。理由は、仕上がりがよくなかったら地元で評判が落ちてしまいますから、手抜き仕事をしづらいのとアフターフォローも頼みやすいからです。

 

特に築古の物件の場合は、常になにか問題が起こると思って間違いありません。利回りの高いものは、そういう部分のリスクも全部入ってその値段になっているわけです。水が漏れている、ガラスが割れてすぐふさいでほしいなど、近ければ緊急を要する場合に駆けつけてもらいやすいですよね。そういう緊急事態は意外と多く、テレビCMを打っている大手の業者に依頼すると高くつきます。ちょっとしたことであればサービスで、ついでに様子を見に行ってくれたりもしますから、やはり地元の業者のほうがお勧めです。

 

将来的にもそのエリアで物件を増やしていくのであれば、信頼できる地元のリフォーム業者を開拓すれば、あとは楽ですよね。「一部屋空くのでお願いします」「また物件を買うのでよろしく」と電話一本で依頼できるようになります。その関係ができるようになるまではたいへんですが、大事な事業のパートナー探しですから、骨を折る価値はあります。

第7章 入居者さん、いらっしゃい! 満室経営を生む極意

第一印象で大切なのは清潔感

包丁などは使わないと錆びて切れ味が落ちていきますが、部屋も同様に、内見のない状態が続くと雰囲気が悪くなっていきます。

 

ずっと閉め切った状態では空気がよどみ、一歩部屋に入った瞬間、においやほこりなどの気配が伝わってしまいます。あまりに長期間使われていないと、トイレやキッチンから下水の臭気が上がってきますから、悪印象は倍増です。また天井の隅に蜘蛛の巣が張っていたり、床に虫のし甲斐が転がっていたら……そんな部屋は絶対に選ばれないですよね。

 

ですから空室期間が長くなった場合は、定期的に掃除したり、水を流したりする必要があります。空室が続くからどんどん部屋の雰囲気が悪くなり、ますます選ばれなくなっていく……負のスパイラルに陥っている物件が世の中には多いです。

契約時は原則、家賃保証会社を通す

家賃滞納は賃貸経営にとって絶対に避けたいリスクですが、その保険となるのが家賃保証会社です。滞納や夜逃げなどがあった場合の家賃の取りはぐれを肩代わりしてくれます。だいたいひと月の家賃の50%程度の掛け金で、2年間の保証が受けられるのが相場です。

 

それが高いとみるか安いとみるかというのは人によると思いますが、僕は払う価値はあると思います。ただし家賃保証会社のほうも商売ですから、独自に審査して、危ないと思う入居希望者は断ってきます。

 

僕は原則的に、家賃保証を受けることができる人だけに入居してもらっています。