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ヨシヒロの読書ブログ

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日本経済の救世主!? 『MMT(現代貨幣理論)とは何か』①

前書き

バブル崩壊後、平成の失われた三十年として、日本経済は長期にわたって停滞をしています。デフレ脱却を目的とした、アベノミクスの柱の一つである大規模な金融緩和やマイナス金利政策も、実施からはや数年ですが、いまだその効果を見ることはできていない模様です。

 

今回は、そんな長期停滞の日本経済を救うかもしれないと、一部で話題となっているMMT(現代貨幣理論)を解説した入門書である島倉原さんのMMTとは何か』について書いていきたいと思います。

 

著者について

著者の島倉原さんは東京大学法学部卒業後、会社に入り、投資信託会社の取締役などを歴任され、現在は京都大学大学院の工学研究科、都市社会工学の博士課程に在籍されており、経済評論活動も行っているということです。

 

MMTはなぜ注目されているのか

MMTは経済学の中で「非主流派」とされる一部の経済学者たちによって体系化が進められてきた比較的新しい理論です。

 

そんなMMTが2019年に入り、欧米や日本をはじめとして、国際的に大きな話題となっています。そのきっかけは、2018年に米国史上最年少の女性下院議員となった、アレクサンドリア・オカシオ=コルテスの発言であったと言われています。

 

彼女の公約には、大規模な財政支出を必要とする政策が列挙されており、ニュースサイトのインタビューにおいて、「その実行資金はどうやってまかなうのか?」と問いかけられます。

 

彼女は連邦政府の債務は、米国にとって経済的な制約ではない」と断言するMMTを信奉していると述べた。そして、「政府は予算のバランスをとる必要はなく、むしろ財政黒字は経済に悪影響を与えるのが現実である」というMMTの見解が、絶対に私たちの中でもっと広がる必要があると語りました。

 

ツイッターで550万人、インスタグラムで400万人に及ぶフォロワーを抱える彼女が支持を表明したことで、MMTは一躍注目を浴びることになりました。

 

そして、米国のマスコミを舞台として、経済学者などによる論争が行われますが、並み居る大物経済学者や金融業界の大物たちがMMTを批判しています。

 

一連の批判を要約すると、「MMTとは、正統派経済学の教義から外れているだけでなく、政府債務の膨張やハイパーインフレなどの危険な結果をもたらしかねない、異端の誤った経済理論」ということです。

 

この論争は欧州や日本にも波及し、麻生太郎財務相や黒田日銀総裁MMTに対し否定的な見解を示しましたが、少数派ながら、MMTを正当な経済理論として評価する国内の議論も存在します。

 

しかし著者は、『積極財政宣言』という本で、1990年代後半以降続いている緊縮財政が日本の長期停滞の真の原因であることを、数々のデータ分析から得られた実証的な結論として提示しており、MMTに対して一般的になされているネガティブな評判は、大いなる誤解に基づくものであると考えています。

 

そこで、「MMTは果たしてどのような経済理論なのか」「主流派経済学とはどこが違うのか」「MMTからどのような結論や示唆を得ることができるのか」といったことを解説するのが本書の目的ということです。